櫂伝馬船

櫂伝馬船の概要と役割

櫂伝馬船（かいでんません）は、日本の伝統的な船神事であるホーランエンヤで使用される特別な船です。この祭りは島根県で行われ、地域文化の重要な一翼を担っています。

構造と特性

櫂伝馬船は、かつては木製の網船が改造されて使用されていましたが、1985年からは繊維強化プラスチック（FRP）製の船が導入されています。これにより、船の耐久性や操縦性が向上し、さらに多くの人々が参加できるようになりました。一般的な櫂伝馬船の大きさは、長さ約15メートル、幅約3メートルで、最大50人が乗り込むことが可能です。また、船体の前後には踊り手のための特設の踊り場が設けられており、祭りの重要な役割を果たしています。

さらに、櫂伝馬船は様々な旗や幟などの装飾で飾られ、地域ごとにそのデザインは異なります。これにより、参加する地域の特色や伝統が表現され、見る者を楽しませます。

乗組員の役割

櫂伝馬船を操る乗組員の役割は多岐にわたります。主要な役職には、櫂伝馬船の総指揮を担う伝馬長（てんまちょう）、音頭を取る音頭取（おんどとり）、水先案内を行う水先（みずさき）、船の舵を取る練櫂（ねりがい）および艫櫂（ともがい）、男性が踊る剣櫂（けんがい）、後方で女性が踊る采振（ざいふり）、音楽に合わせて打たれる太鼓（たいこ）、漕がれる櫂掻（かいかき）や招待（しょうたい）などがあります。これらの役職が連携し、船の運航や祭りの雰囲気を作り出します。

歴史の背景

櫂伝馬船の歴史は1808年にさかのぼります。その年、神輿船が強風と雨に見舞われた際、馬潟の漁師が神輿を助けて阿太加夜神社まで送り届けました。この出来事がきっかけとなり、10年後の1818年には馬潟の漁船が正式に渡御に加わることになりました。すると、神輿船の曳き役として役立つようになり、これによって祭りがより盛り上がることとなりました。

また、帰還した漁師が神輿を助けた喜びを表現するために踊り始めたことが、櫂を持って踊る「カイ踊り」の起源とされています。この踊りの技術を伝えたのは、加賀に居住していた重蔵という船頭でした。彼によって馬潟の人々は踊りの技術を習得し、それがやがて櫂伝馬船として知られるようになりました。

五大地の役割

ホーランエンヤに参加する地域は、一般的に五つの地区から成り立っています。これらの地区は「五大地」と呼ばれ、それぞれの地区が独特の色を持っています。

• - 馬潟（まかた）: 一番船で、1808年から参加しています。「いの一まかた」と称されます。
• - 矢田（やだ）: 二番船で、1818年より参加。
• - 大井（おおい）: 三番船で、1828年より参加。
• - 福富（ふくとみ）: 四番船で、1838年より参加。
• - 大海崎（おおみざき）: 五番船で、1848年より参加。

このように、櫂伝馬船は日本の伝統文化を色濃く反映する重要な存在であり、地域の歴史と誇りを担っています。

もう一度検索