欧州人権裁判所

欧州人権裁判所の概要

設立と役割

欧州人権裁判所は、1959年にフランスのストラスブールで設立され、1998年の条約改定により正式な常設機関となりました。この裁判所は、加盟する欧州評議会の国々を対象とした人権保護を目的としており、国家間の紛争を扱う国際司法裁判所とは異なり、個人や団体が国家を相手に提訴できる点が特徴です。これは、欧州連合の欧州司法裁判所との共通点でもあります。

使命

欧州人権裁判所の主な使命は、1950年に締結された欧州人権条約の効力を担保することにあります。この条約は1953年に発効し、加盟国は自国の人権侵害に対する判決を履行する義務を負っています。判決の実施は、各国の人権状況に大きな影響を与えるため、裁判所の存在は極めて重要です。

裁判官とその運営

裁判官は加盟国から各1名が任命され、2022年現在、47名の裁判官が在籍しています。各裁判官の任期は9年で、定年は70歳となっています。2022年11月1日現在、アイルランド国籍のシーフラ・オリアリーが長官を務めていますが、裁判官は国の代表としてではなく、独立した存在として判断を下すことが求められています。

この裁判所は4つの部に分かれており、それぞれに統括裁判官がいます。提訴があった場合、まず3人の裁判官からなる委員会が事件の選別を行い、選ばれた事件は小法廷で審理されます。重大な案件はさらに大法廷で検討されるプロセスを経ます。

原告と被告

欧州人権裁判所において、被告は欧州評議会加盟国だけです。つまり、加盟国の公権力による人権侵害に限られます。原告は、個人、グループ、団体、または国家となることができ、弁護士を代理人として任命することが推奨されますが、強制ではありません。

提訴するためには、原告は該当国の全ての法的手段を尽くしている必要があり、その上で、最終審でも救済が認められなかった場合のみ、欧州人権裁判所に訴えを起こすことができます。また、裁判所の公用語は英語とフランス語ですが、訴状は加盟国の言語でも受け付けられます。

社会への影響

この裁判所の判決は、欧州各国における人権状況に多大な影響を与えています。たとえば、イギリスの情報機関がアイルランド共和軍に関連する人物を即座に射殺した事件において、遺族が政府を訴えました。欧州人権裁判所は、この行為を違法と認定し、政府に対して賠償金を支払うよう命じました。これにより、司法制度のあり方や人権に対する国の責任について再考が促されています。

参考リンク

• - 欧州人権裁判所公式サイト（英語・フランス語）
• - 在ストラスブール日本国総領事館ホームページ（日本語）
• - 裁判所公式パンフレット「裁判所の概要」（日本語）
• - 裁判所公式パンフレット「人権裁判所50の質問」（日本語）
• - 裁判所公式パンフレット「よくある質問とその答え」（日本語）
• - 裁判所公式パンフレット「欧州人権条約ー変化し続ける条約」（日本語）

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