欧州気候変動プログラム

欧州気候変動プログラム：気候変動対策の取り組みと課題

欧州気候変動プログラム（European Climate Change Programme、ECCP）は、地球温暖化による深刻な影響を回避するため、欧州委員会が2000年6月に立ち上げた大規模な取り組みです。国際的な枠組みである京都議定書の履行に向け、具体的な戦略と方策の策定、実施を目的としています。

ECCPは、加盟国政府、産業界団体、環境保護団体など、多様な関係者（ステークホルダー）が参加する包括的なプログラムとして展開されました。その活動は、温室効果ガス排出量の削減目標設定から、排出量取引制度の設計・運用、再生可能エネルギー導入促進、省エネルギー技術開発支援など多岐に渡ります。

ECCPの大きな成果の一つに、世界最大規模の温室効果ガス排出量取引制度であるEU ETS（欧州連合域内排出量取引制度）の確立があります。EU ETSは、企業に対し排出量上限を設定し、排出枠の取引を通じて排出量削減を促す市場メカニズムです。この制度は、EU域内の温室効果ガス排出量削減に大きく貢献しています。

ECCPが目指すのは、産業革命以前と比較して地球の平均気温上昇を2℃未満に抑えることです。この目標は、1996年にEUが設定し、その後も繰り返し確認されてきました。しかし、世界的な気候変動対策の遅れにより、2027年までに気温上昇が1.5℃に達する確率が50％にまで高まっているとされており、2℃目標達成の不確実性が増しています。

もし2℃目標の達成が現実的ではなくなれば、EUは気候変動政策を根本的に見直さざるを得なくなる可能性があります。より大胆で迅速な対策が必要となるでしょう。

交通部門におけるCO2削減

ECCPは、交通部門からの温室効果ガス排出量削減にも力を入れてきました。2007年には、新車乗用車からのCO2排出量規制を導入し、基準値を段階的に厳しくしています。また、2011年には、運輸部門全体の温室効果ガス排出量を60％削減するという野心的な目標を掲げた「EU輸送ロードマップ」を発表しました。

このロードマップでは、自動車の燃費向上技術開発、代替燃料の普及促進、公共交通機関の利用促進などを柱とした政策が推進されています。しかし、これらの政策は、必ずしも円滑に進んでいるわけではなく、経済的負担や社会的な抵抗に直面しています。

黄色いベスト運動と燃料税

フランスでは、2019年にCO2排出量削減のための燃料税増税に反対する「黄色いベスト運動」が勃発しました。この運動は、燃料価格の高騰が低所得層に大きな負担を強いるとして、国民の反発を招いたものです。

この騒動を機に、フランスでは燃料税増税への批判が高まり、代わりに、自転車道整備、バス専用レーン整備、鉄道網などの公共交通機関の拡充に税金を投入すべきだという意見が強まりました。この出来事は、気候変動対策が社会的な合意形成なしには進められないことを示しています。

今後の課題

ECCPは、欧州における気候変動対策の中核的な役割を果たしてきましたが、今後、より困難な課題に直面するでしょう。2℃目標の達成が困難になる中で、より強力な排出量削減策、社会全体の意識改革、そして国際協力の強化が不可欠です。また、気候変動対策と経済成長の両立、社会正義の確保といった課題にも取り組む必要があります。ECCPの今後の取り組みが、地球全体の未来を左右するといっても過言ではありません。

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