歌う女・歌わない女

『歌う女・歌わない女』（L'UNE CHANTE, L'AUTRE PAS）は、1977年にアニエス・ヴァルダが監督したフランスのドラマ映画です。この作品は、1960年代初頭のパリを舞台に、異なる人生を歩む二人の女性の友情を軸に展開されます。

主人公の一人、ポムは17歳で歌手を目指す女子学生。もう一人の主人公、シュザンヌは写真家と同棲し、二人の子供を持つ母親です。二人は偶然出会い、それぞれの境遇や考え方の違いを抱えながらも、強い絆で結ばれていきます。

映画は、当時の社会背景を色濃く反映しています。中絶や未婚の母といった、女性たちが直面していた困難な問題が描かれており、それらの問題に対して女性たちが声を上げ始めた時代が舞台となっています。ポムは歌手として成功を夢見て、自分の道を切り開いていこうとします。一方、シュザンヌは二人の子供を育てながら、社会的な制約と闘い、自身の生き方を探求します。二人の女性の姿を通して、女性が社会の中でどのように生きていくのか、また女性同士の連帯がいかに重要であるかが描かれています。

アニエス・ヴァルダ監督は、ヌーベルバーグの先駆者として知られており、本作はその代表作の一つとされています。彼女独特の視点と、ドキュメンタリーのような映像スタイルが、物語にリアリティと深みを与えています。女性の権利をめぐる闘いや、社会の変化を背景に、二人の女性の友情を繊細に描き出したこの作品は、公開から年月を経た現代においても、多くの観客に感動と共感を与え続けています。

この映画は、女性のエンパワーメントや社会問題に関心のある人にとって、見逃せない作品です。アニエス・ヴァルダ監督の卓越した演出と、二人の女優の素晴らしい演技によって、観る者の心に深く刻まれるでしょう。

もう一度検索