正体 (染井為人)

正体：死刑囚の逃亡と、彼と関わる人々の物語

染井為人氏による長編小説『正体』は、2020年1月22日に光文社より刊行され、2022年には文庫版も発売されました。2022年にはWOWOWでテレビドラマ化され、2024年には映画版の公開も予定されている注目作です。

物語のあらすじ

埼玉県の民家で発生した一家殺人事件。18歳の少年、鏑木慶一が逮捕され、死刑判決を受けます。しかし、収監から1年半後、鏑木は神戸拘置所を脱獄。整形し、偽名を使いながら逃亡生活を始めます。

逃亡の過程で、鏑木は様々な人々と出会います。工事現場で働く仲間、不倫関係の終止符を打った女性社員、冤罪で職を失った元弁護士、新興宗教に救いを求める主婦など、それぞれが人生の岐路に立っている人物ばかりです。彼らは、鏑木の誠実さに惹かれ、彼を助け、支えます。

しかし、やがて彼らは、彼らが助けた青年こそ、あの凄惨な一家惨殺事件の犯人であり、死刑囚だと知ることになります。その事実を知った時の衝撃、そして葛藤は計り知れません。

脱獄から1年後、グループホームで働く酒井舞は、思いを寄せる先輩・桜井が実は鏑木だと気づきます。まもなく、鏑木は他の人間によって警察に通報され、グループホームは包囲されます。絶体絶命の状況の中、鏑木は舞に、自らの逃亡の理由を語り始めます。

登場人物

物語には多くの登場人物が登場し、それぞれが複雑な背景と心情を抱えています。

鏑木慶一: 一家3人を殺害したとして死刑判決を受けた少年死刑囚。児童養護施設で育ち、両親はいない。逃亡中も常に新しいことに挑戦する一面を持つ。
井尾由子: 元高校教師。若年性アルツハイマーを発症し、退職。夫の死後、息子夫婦と暮らしていたが、息子夫婦と孫を殺害される。
四方田保: グループホーム「アオバ」の社員。過酷な業務をこなす責任感の強い青年。
酒井舞: グループホーム「アオバ」のパート。鏑木の正体に気づき、彼の逃亡の理由を知ることに。
* その他: 建設作業員、メディア会社社員、元弁護士、新興宗教信者など、様々な境遇の人々が鏑木と関わり、物語を彩ります。それぞれの事情や葛藤が、物語に深みを与えています。

WOWOW版テレビドラマと映画

『正体』は、2022年にWOWOWでテレビドラマとして放送されました。亀梨和也さんが主演を務め、原作とは異なる結末で話題を呼びました。2024年には、横浜流星さん主演で映画化されることも決定しています。テレビドラマ版と映画版では、どのような解釈がなされるのか、注目が集まります。

まとめ

『正体』は、死刑判決を受けた少年の逃亡劇を通して、人間の善悪や、社会の闇を深くえぐる作品です。多くの登場人物たちの複雑な人間模様、そして衝撃的な結末は、読者・視聴者に大きな衝撃と感動を与え、考えさせられることでしょう。小説、テレビドラマ、映画と、様々な形で『正体』の世界に触れることができるのも魅力の一つです。それぞれの表現方法による解釈の違いも楽しみの一つと言えるでしょう。

もう一度検索