正保城絵図

正保城絵図とは

正保城絵図（しょうほうしろえず）は、17世紀の中頃に徳川幕府が大名に対し、各地の城を描くことを命じた図面です。この絵図は、統一された形式で城の軍事的な特徴を示すことを目的としていました。特に、城郭に関する重要な情報を記載し、徳川幕府の権威を強化するための重要な役割を果たしました。

制作の経緯

正保元年、すなわち1644年の12月、当時の将軍徳川家光は全国の大名に国絵図や郷帳とともに、城絵図の提出を求めました。提出の締め切りは設けられなかったため、実際には数年の間で提出されていましたが、一般的には4～5年ほどで集まったと考えられています。絵図の内容は軍事施設を中心にし、記載される情報も基本的に軍事に関連する重要事項に限られています。提出された正保城絵図は、江戸城内の紅葉山文庫に保管されていました。

体裁と内容

現存する正保城絵図の多くは折り畳まれた形式で、1城ごとに1鋪にまとめられています。サイズは東西・南北で約3～4メートル程度です。絵図の素材には厚手の間似合紙が用いられており、多くは色彩が施されています。外題には城名や城主名などが記され、内題には領国名や藩主名が書かれています。特筆すべきは、提出年紀が記載されているのは徳島城のみという点です。

記載基準

正保城絵図の記載は、幕府からの文書によって大名に通達されていました。例えば、城の主要部分である本丸や二ノ丸、三ノ丸に関しては、石垣や土手、堀の規模が指定され、天守や櫓の描写が求められました。更に、道筋や町人地の図示も重要視され、細かな道筋の長さも記入する必要がありました。

明治維新後の状況

現在、再整備された紅葉山文庫を基に、国立公文書館内閣文庫には63点の正保城絵図が所蔵されています。すべての絵図は1986年に国の重要文化財として指定されました。また、紅葉山文庫から流出した若松城、高田城、仙台城の絵図も現在確認されております。

関連資料

正保城絵図の提出と同時期に、城に関する概要を書いた文書も幕府に提出された可能性があります。関連するこの文書には、城の名称や作成者、年紀、さらに城郭の詳細が記載されたとされています。

また、道帳と呼ばれる資料も存在し、これは大名の居城だけに限らず、廃城となった古城についても詳しく記載されています。さらに、木形と呼ばれる城の木製模型も一部の大名に対して提出が義務付けられており、その中にある情報も城絵図の理解を深める上で役立っています。

結論

正保城絵図は、ただの絵図ではなく、軍事的視点から城を捉えた重要な文化遺産であり、江戸時代の城の姿と、幕府の政治的意図を知るための貴重な資料です。幕府によるこのような取り組みは、各大名に対する権威の象徴であり、当時の歴史的文脈を理解する手がかりとなるでしょう。

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