正村公宏

正村 公宏

正村 公宏（まさむら きみひろ、1931年11月15日 - 2020年10月11日）は、日本の優れた経済学者です。経済政策論および日本経済論を専門分野とし、長年にわたり専修大学で教鞭を執り、後に名誉教授の称号を授与されました。

生涯と経歴

正村氏は東京に生まれ、日本の最高学府の一つである東京大学の経済学部で経済学を修めました。大学卒業後、研究者としての道を歩み始め、1968年には専修大学経済学部の助教授に就任します。その後、1974年には同大学の教授へと昇進し、経済学の研究と教育に深く貢献しました。2002年に大学を定年退職した後は、専修大学名誉教授としてその功績が称えられました。

学術的な業績としては、1972年に発表した研究成果をまとめた『知識産業論』によって、専修大学から経済学博士の学位を取得しています。また、1989年には『福祉社会論』の研究で、その優れた内容が評価され福武直賞を受賞するなど、経済学者として高い評価を得ています。

研究と思想

正村氏の経済学における主要なテーマは、当時の日本経済が抱えていた問題点への批判と、あるべき社会の姿の追求でした。特に、産業資本の論理が社会全体に優先される「産業資本優位主義」に対しては批判的な立場を取りました。経済成長のみを追求するのではなく、国民一人ひとりが安心して暮らせる社会、すなわち福祉が充実した社会の実現こそが重要であると強く主張しました。その思想は、『福祉社会論』をはじめとする数多くの著作の中で詳細に論じられています。

著作活動

正村氏は、経済学者としての専門分野にとどまらず、幅広い領域で精力的な著作活動を行いました。経済学や経済政策に関する理論書や入門書、日本経済の現状分析など、その著作は多岐にわたります。『現代日本経済論』『経済政策原理』『経済学原理』『経済政策論』など、経済学の基盤となる著作から、当時の社会問題に切り込むものまで、研究者や学生、一般読者に向けて多くの書物を著しました。

また、正村氏は近代から現代にかけての日本の歴史にも深い関心を持ち、近現代史家としての顔も持っていました。特に『戦後史』と題された著作は、多くの読者に日本の戦後を知るための重要な資料として読まれ、歴史理解に貢献しました。他にも『戦後日本資本主義史』『現代史』など、歴史に関する複数の著作を刊行しています。

研究とは別の側面として、正村氏には個人的な経験に基づいた著作もあります。ダウン症を持つ息子さんを育てる中で感じた喜びや苦悩、社会との関わりなどを率直に綴った『ダウン症の子をもって』は、刊行以来多くの人々の共感を呼び、ロングセラーとなりました。この著作は、家族のあり方や障害を持つ人々への理解を深めるきっかけを提供し、社会的に大きな反響を呼びました。

共著や編著も多数あり、他の研究者と協力して経済学や社会問題、歴史など幅広いテーマについて論じています。翻訳書も手掛け、海外の重要な研究成果を日本に紹介する役割も果たしました。

まとめ

正村公宏氏は、経済政策論・日本経済論の専門家として、産業資本優位主義を批判し、福祉社会の必要性を説きました。専修大学での教育・研究活動に加え、経済学、近現代史、そして個人の経験に基づいた幅広い著作を通じて、学術界だけでなく広く社会に影響を与えました。その多角的な視点と社会への貢献は、日本の経済学史において特筆されるべきものです。2べき業績と言えるでしょう。

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