武居三吉

武居三吉（たけいさんきち）

武居三吉は1896年10月26日に長野県の平野村、現在の岡谷市に生まれた日本の著名な農芸化学者です。彼の学問の道は、旧制長野県立諏訪中学校（現在の長野県諏訪清陵高等学校）や旧制第二高等学校を経て、1920年に東京帝国大学農学部農芸化学科を卒業するところから始まります。

卒業後の1922年、武居は理化学研究所に勤務し、そこでの研究によって名を馳せることになります。彼はその後、ドイツのハイデルベルク大学に留学し、国外での経験を積んで帰国します。1928年には京都帝国大学の教授に就任し、さらに1931年には京都大学化学研究所の所長として活動を開始しました。1934年には東宮御成婚記念賞を受賞し、その研究が評価されました。この賞は「デリス根の有効成分ロテノンの化学的構造に関する研究」に対して授与されたものです。

武居は1940年から1946年まで京都教育大学の学長も務め、戦後は京都市の教育委員として教育界にも貢献しました。

彼の研究の中でも特に注目されるのが、デリス根から抽出されるロテノンの化学構造の解明です。ロテノンは農業や医学においても重要な成分であり、その研究は今なお多くの人々に影響を与えています。

武居の業績は、農芸化学の分野において先駆的なものであり、特に緑茶の香りに関する研究や、その後の香気成分に関する研究において重要な基盤を作りました。1933年から1938年にかけて共著で発表された『緑茶の香の研究』はその代表的な著作の一つであり、他にも1935年には『茶の香気の生化学』を著しています。これらの著作は、茶の香気成分を科学的に分析するうえで欠かせないもので、今もなお参考にされることが多いです。

武居の功績は、学問だけでなく、教育界にも広がりを見せました。彼は1964年に日本学士院の会員に選出され、1958年にはドイツ自然科学学士院及びハイデルベルク科学学士院の外国人会員となりました。これらの栄誉は、彼の学問的な貢献を証明するものであり、日本国内外での評価を得ることにつながりました。

1952年6月25日に逝去した武居三吉の業績は、農芸化学の発展に多大な影響を与え、今日でもその研究が生かされています。彼の業績を振り返ることで、科学の進歩における彼の貢献の大きさを再認識することができます。

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