武田友寿

武田友寿（1931年1月16日 - 1991年2月1日）は、キリスト教を信仰の基盤とした文芸評論家として知られています。宮城県亘理郡に生まれ、日鋼技能養成所を卒業後、青年学校での学びを経て、日本製鋼室蘭製作所の技術者として社会に出ました。技術者として働く傍ら、武田は信仰への道を深め、1953年に受洗。信仰と文学への探求は、彼の評論活動の原点となりました。

1964年には、独学で司法試験(第1次)に合格するという異色の経歴を持ちます。しかし、法曹の道に進むのではなく、文芸評論家としての活動に専念することを決意。1968年、カトリック実存主義に基づいた評論『美神の宿命』を発表し、文壇にデビューしました。

武田の名を広く知らしめたのは、1970年に発表した『遠藤周作の世界』です。この作品で亀井勝一郎賞を受賞し、文芸評論家としての地位を確立しました。遠藤周作の作品を深く読み解き、その思想と文学的意義を明らかにした点が評価されました。その後、清泉女子大学教授として教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。

武田友寿の評論は、キリスト教信仰と文学、そして人間存在の意味を深く掘り下げたものが多く、著書には『宗教と文学の接点』『救魂の文学』『日本のキリスト者作家たち』などがあります。また、内村鑑三や正宗白鳥といった作家にも光を当て、彼らの思想や生涯を考察した作品も発表しました。

主な著書

『美神の宿命 亀井勝一郎と唐木順三』中央出版社 1968
『遠藤周作の世界』中央出版社 1969
『宗教と文学の接点』中央出版社 1970
『文学と人生 人間のしるし』中央出版社 1970
『救魂の文学』講談社 1974
『日本のキリスト者作家たち』教文館 1974
『遠藤周作の文学』聖文舎 1975
『作家の印象 出会いの歳月』中央出版社 1976
『遍歴の求道者 亀井勝一郎』講談社 1978
『戦後文学の道程』北洋社 1980
『内村鑑三・青春の原像』日本YMCA同盟出版部 1982
『「冬」の黙示録 正宗白鳥の肖像』日本YMCA同盟出版部 1984
『「沈黙」以後 遠藤周作の世界』女子パウロ会 1985
『切支丹たちの劇』講談社 1986
『この人を見よ 私の小林秀雄』教文館 1987
『極北の旋律 八木義徳の世界』中西出版 1988
* 『正統と異端のあいだ 内村鑑三の劇的なる生涯』教文館 1991

武田友寿は、信仰と文学を通して、人間の内面にある葛藤や希望を描き出し、読者に深い感動と示唆を与えました。彼の作品は、現代においても読み継がれ、その精神は多くの人々に影響を与え続けています。

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