歴史的緊急事態

歴史的緊急事態とは

歴史的緊急事態とは、国家や社会が記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項であり、特に国民の生命、身体、財産に大規模かつ重大な被害が生じる、またはそのおそれがある事態を指します。これらの事態は、社会全体に大きな影響を与え、政府全体での対応が求められます。

この制度の目的は、過去の出来事から得られた教訓を将来に活かすことにあります。そのため、政府はこれらの事態が発生した場合、公文書管理のガイドラインに基づき、会議の開催日時、出席者、発言内容、決定文書などの詳細な記録を作成することが義務付けられています。

歴史的緊急事態の定義

歴史的緊急事態は、以下の要素を含む場合に規定されます。

国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項：単なる日常的な政策決定ではなく、歴史的に重要な意味を持つ政策事項を対象とします。
社会的な影響が大きく、政府全体として対応が必要な事態：特定の部署や機関だけでなく、政府全体で連携して対応する必要がある事態を対象とします。
将来への教訓として活用されるべき事態：過去の経験から学び、将来の対策に活かすことを目的としています。
国民の生命、身体、財産に大規模かつ重大な被害が生じる、またはそのおそれがある事態：人命に関わる危機や、財産に重大な損害を与える可能性がある事態を対象とします。

公文書管理ガイドライン

公文書管理のガイドラインでは、政策の決定や了解を行う会議については、出席者や発言内容などを詳細に記録することが求められます。一方、政策の決定や了解を行わない会議については、出席者と確認事項の記録で足りるとされています。

歴史

歴史的緊急事態の概念は、2011年の東日本大震災における政府対応の反省から生まれました。当時の政府会議で議事録が作成されていなかったことが問題視され、2012年に制度が制定されました。制定後数年間は実際に指定される事例はありませんでしたが、2019年から2020年にかけて発生した新型コロナウイルス感染症の流行を受け、2020年3月10日に初めて同感染症への政府対応が歴史的緊急事態として指定されました。

過去の指定例：新型コロナウイルス感染症の流行

新型コロナウイルス感染症の流行では、与野党の党首会談で野党側から歴史的緊急事態の指定が求められ、政府が検討を開始しました。その後、規制改革担当大臣や内閣総理大臣が指定の方針を表明し、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案の提出に合わせて閣議決定されました。

指定に伴い、関連する議事録を3ヶ月以内に作成することが命じられ、記録の対象は、専門家会議や対策を決める関係閣僚会議だけでなく、野党が基本方針を決定していると指摘する連絡会議なども含まれることとなりました。

西村康稔経済再生担当大臣兼新型コロナ対策担当大臣は、内閣官房が担当する連絡会議、課長級会議、関係閣僚会議、対策本部、幹事会、専門家会議についても記録を残す方針を示しました。公文書管理を担当する北村誠吾大臣は、各省庁の公文書管理担当者に対して、歴史的に重要な文書を適切に保存・管理し、国立公文書館に移管するように指示しました。

会議の種類と記録義務

政府の見解によれば、会議が「決定を行う会議」か「決定を行わない会議」かによって、記録義務の内容が異なります。

決定を行わない会議の例：
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
連絡会議

これらの会議では、出席者と確認事項を記録すればよいとされています。

決定を行う会議の例：
新型コロナウイルス感染症対策本部

これらの会議では、議事録や議事概要の作成が義務付けられています。


事態に対応する会議として19件の会議が指定されましたが、そのうち議事録や議事概要の作成が義務付けられたのは4件のみでした。残りの15会議については、進捗状況や確認事項を記載した文章を作成すればよいとされています。そのため、政府が新型コロナウイルスにどのように対処したのかを事後検証することが困難であるという実態があります。

会議の議事録作成義務一覧

会議名	議事録作成義務	内容
:--------	:---	:-----------
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議	無	進捗状況や確認事項を記載した文章でよい
新型コロナウイルス感染症対策本部	有	議事録または議事概要を作成
連絡会議	無	進捗状況や確認事項を記載した文章でよい

関連情報

緊急事態
* 非常事態宣言


この情報は、過去の教訓を活かし、将来の危機に備えるための重要な手がかりとなります。

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