死の臓器

小説『死の臓器』

『死の臓器』は、麻野涼による小説であり、2013年2月に文芸社文庫から刊行された。また、2015年にはWOWOWでテレビドラマとしても放送された本作は、臓器移植をめぐる倫理的な問題や臓器売買に関する闇を描いています。

あらすじ

プロローグ

物語は、テレビ制作会社のディレクターである沼崎恭太が青木ヶ原樹海で自殺者の映像を撮ろうとしているところから始まります。彼は偶然、ダウンコートにハイヒール姿の若い女性の遺体を発見します。この女性は凍死したと確認され、大量の睡眠薬を服用していたことが判明し、また、左腎臓に手術の痕跡がありました。しかし、遺留品はなく、周囲からの反応も全く得られませんでした。

臓器売買の疑惑

物語は、熊本県の慈愛会病院長である太田の野心的な計画に焦点を当てます。太田は自身の病院を大規模に展開したい一方で、透析病院の経営に力を注いでおり、患者の柳沢裕子と大平剛との不適切な関係を邪魔に思います。移植手術を行った日野医師が、倫理的な問題に直面しながらも信頼されている中で、メディアと政府の圧力がかかります。厚生労働省から派遣された奥村局長は、移植手術に関する行政手続きを厳しく追及し、全国の新聞で臓器売買の噂が広まりました。

樹海の証言者

沼崎は樹海における事件を追う中で富士吉田署の刑事と親しくなり、記事を通じて事件の真相を掴もうとします。彼は元恋人である日野医師の娘・由香里と再会し、日野医師に対する疑惑が彼女の心に影を落とします。沼崎は調査を進めるにつれて移植手術の問題がより複雑化し、他の患者やその家族も巻き込まれていくことに気づきます。

移植王国

沼崎が上原議員の娘、並川良子を取材する中で、上海での腎臓移植の事実が浮かび上がります。彼は彼女の腎臓移植の手配を行った陳院長と接触し、膨大な費用がかかる生体腎移植について詳しく調べていきます。しかし、この過程で彼自身の命も脅かされていくことになります。

新病院建設と訴訟

一方、由香里は慈愛会病院の具合を確かめ、不正を暴こうと試みます。「レストア・キッドニ移植への理解を求める会」が設立され、裏に潜む臓器売買の実態が次第に明らかになっていきます。そして、神経を使った調査が進む中で、沼崎はメディアの圧力や船橋の行動にさらされ、真実を暴こうと奮闘します。

最終局面

船橋が強制送還されるなどの動きを経て、物語は一気に緊迫感を増します。医療業界の倫理とそれにまつわるビジネスの暗黒面を暴き、謝罪や裏切りが渦巻く中で、重大な結末に至ります。沼崎は自身が関わった事件の真実を伝えるために再度取材を行い、様々な人々との繋がりやその後の運命を描き出していきます。

テレビドラマ化

この作品は2015年にWOWOWでドラマ化され、出演者には小泉孝太郎や武田鉄矢などが名を連ねました。リアルな臓器移植の現実とその倫理的問題を描くことで、多くの視聴者に衝撃を与えました。

『死の臓器』は、臓器移植というテーマを深く掘り下げており、医療と倫理の交錯を描いた力強い故事を提供しています。

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