死んだ馬

『死んだ馬』の概要

松本清張が手掛けた小説『死んだ馬』は、その独特なストーリー展開と複雑な人間関係で多くの読者を魅了しています。この作品は、1969年に『小説宝石』に掲載され、その後、同年に中編集『内海の輪』に収録されました。更に、1981年と2002年の二度にわたりテレビドラマ化され、広く知られるようになりました。

あらすじ

物語は、銀座の裏通りにあるバーのマダム・石上三沙子と、名のある建築家・池野典也との出会いから始まります。三沙子はバーを運営して三年目のこと、池野が優れた建築設計家であり、巨額の財産を持っていることを耳にします。彼女は次回の来店時に池野を誘い出し、同じ穴の狢となる運命を掴みます。病を抱えた妻を失った池野は、33歳という若さの三沙子と再婚します。

一見幸福な結婚生活が続いているかに見えましたが、やがて三沙子は池野の肉体的力の衰えに気づきます。夫の設計事務所の経理主任である樋渡忠造と協力し、彼女は池野の収入の実態を調べることになります。しかし、次第に池野の創造性が乏しくなり、妻としての不安が高まります。

夫の死後も設計事務所を維持し、自らの名声を高めたいと考えた三沙子は、事務所の中で最も優秀な設計士、秋岡辰夫に目をつけます。彼女は、自身の優れた社交術や魅力を駆使して秋岡に近づき、これまでの経験を活かして彼を巧妙に操ります。彼は女性経験が無かったため、三沙子の罠にはまってしまいます。

テレビドラマ化

この小説は、非常に人気があり、1981年と2002年にそれぞれ異なる設定でテレビドラマ化されました。

1981年版

1981年4月25日に放送されたこのバージョンは「松本清張の死んだ馬 殺人設計図」というタイトルで、テレビ朝日の『土曜ワイド劇場』枠で放送されました。視聴率は14.4％を記録し、キャストには小川真由美、山本亘、山田吾一が名を連ねています。脚本は吉田剛が担当し、井上昭が監督を務めました。

2002年版

2002年4月22日には「松本清張没後10年特別企画・死んだ馬・殺意の接点」というタイトルで放送され、舞台が蓼科高原に移されています。こちらも原作同様に人間関係を重視し、新たな殺人方法や犯行の流れが独自に設定されました。名キャストにはかたせ梨乃、萩原聖人、蟹江敬三が登場し、制作はTBSエンタテインメントが行いました。

このように『死んだ馬』は、ただの文芸作品ではなく、人間の欲望や権力が絡み合うドラマとして、多くの人々に感動を与え続けています。松本清張の独創的なストーリーと深いキャラクター描写は、時代を超えて愛される所以となっているのでしょう。

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