死仮面

『死仮面』について

横溝正史による長編推理小説『死仮面』は、金田一耕助シリーズの一作として、ミステリー界で高い評価を得ています。この作品は、1949年の中部日本新聞社の『物語』に連載され、その後単行本化されることはなく幻の作品となりました。しかし1982年にカドカワノベルズから再発掘され、正式に収録されるに至ります。現在は角川文庫と春陽文庫に収められ、多くの読者に親しまれています。

背景と発掘の経緯

本作が初めて発表されたのは1949年5月です。同年12月まで連載されましたが、単行本として世に出ることはありませんでした。長い間、作品は忘れ去られた存在となっていましたが、中島河太郎の努力により、国会図書館での調査を経て7回分の原稿が発見されました。しかし、第4回の原稿である8月号が欠落していたため、不完全な状態でした。

作者である横溝はこの作品を再度手直しするつもりでしたが、『悪霊島』の刊行後、体調不良のため療養を余儀なくされました。そのため中島は、欠落部分を自身で補完するという措置を取ります。これにより、現在の角川文庫版が完成したのです。さらに後年、未発表の8月号の原稿が見つかり、1998年に春陽文庫版として収録されることに至ります。

あらすじ

1948年9月、探偵金田一耕助は岡山県警に立ち寄り、磯川警部から奇妙な告白書を見せられます。その内容は、美術店を営む野口慎吾という男が、傷ついた女性・山口アケミと情を通じた後に彼女を死なせてしまったというものでした。彼は彼女の願いに応じ、デスマスクを作成し一つを宛先に送り、もう一つは自身の思い出として所持していたのです。

警察の捜査により、デスマスクの女性が実は葉山京子と名乗るキャバレーの踊り子で、男を射殺した後に逃走していたことが判明します。逮捕された野口は護送中に行方をくらまし、その後デスマスクの行方も不明となります。

10月半ば、金田一事務所に上野里枝という女性が訪れ、彼女の妹のデスマスクが岡山から送られてきたことを知らされます。このデスマスクは、川島夏代という女性の元に送られていました。ストーリーは、過去の家族の関係や隠された真実へと広がり、金田一は様々な人物を通じて事件の全貌を探っていきます。

登場人物

• - 金田一耕助：私立探偵。
• - 野口慎吾：岡山の美術店の店主。
• - 川島夏代：参議院議員で川島女子学園の校長。
• - 上野里枝：夏代の秘書で彼女とは異なる父を持つ。
• - 山内君子：夏代と里枝の妹で、デスマスクの持ち主。

事件が進むにつれ、金田一は多くの人々の複雑な関係や過去に直面し、真相に迫っていきます。本作では、デスマスクが物語の中心に据えられ、人間の心の奥深くを探求することがテーマとなっています。ミステリーと人間ドラマが織り交ぜられた作品は、読者に強い印象を残し、今なお多くのファンを魅了し続けています。

映像化

1986年にはTBS系列でテレビドラマ化もされ、名探偵・金田一耕助の知られざる一面を掘り下げています。本作を通じて、横溝正史の独特な世界観や推理の面白さを堪能することができます。

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