殿暦

『殿暦（でんりゃく）』は、平安時代後期の公卿、藤原忠実（ふじわらのただざね、1078年 - 1162年）によって記された日記です。この日記は、忠実が摂政・関白の地位にあった時期を中心に記録されたものであり、「殿下（摂政関白）日暦」の略称であると考えられています。

また、『忠実公記』、『知足院関白記』、『知足院殿記』（あるいは単に『殿記』）といった別名でも知られています。これは、忠実が「知足院」という邸宅を所有していたことに由来します。

原本は残念ながら現存していませんが、文永4年（1267年）に近衛基平（このえもとひら）が家臣とともに書写した古写本22冊が現存しており、これらは重要文化財に指定されています。これらの写本によって、当時の記録を現代に知ることができます。

現存する記事は、承徳2年（1098年）から元永元年（1118年）までの期間を網羅しています。この時期は、藤原忠実が政治的に最も影響力を持っていた時期であり、朝廷における政務や儀式の詳細な様子が克明に記録されています。そのため、『殿暦』は平安時代後期の政治や社会を知る上で非常に重要な史料となっています。

日記には、当時の宮廷における儀式次第、官僚の任命、政策決定の過程など、多岐にわたる情報が記述されています。特に、忠実自身が関与した重要な政治的出来事や、その内情に関する記述は、歴史研究において欠かせないものとなっています。

『殿暦』は、単なる個人の日記という枠を超え、当時の社会や文化を伝える貴重な記録として、今日まで大切に保存されています。

参考文献

* 吉岡真之「殿暦」（吉川弘文館『國史大辭典 9』、1988年）

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