母乳 (アルバム)

『母乳 - Mother's Milk』は、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ（以下、レッチリ）が1989年に発表した4枚目のスタジオ・アルバムです。このアルバムは、バンドにとって大きな転換期となる作品でした。

新メンバーの加入と制作の背景

ギタリストのヒレル・スロヴァクの急逝後、バンドは新たなメンバーを探すことになります。オーディションの結果、ジョン・フルシアンテがギタリストとして、チャド・スミスがドラマーとして加入。彼らの加入によって、レッチリは新たなサウンドを追求し始めます。

アルバムには、スティーヴィー・ワンダーの「ハイヤー・グラウンド」やジミ・ヘンドリックスの「ファイア」といったカバー曲も収録されています。特に「ハイヤー・グラウンド」は、レッチリらしいファンキーなアレンジが施され、シングルカットとしても成功を収めました。また、ヒレル・スロヴァクに捧げられた「ノック・ミー・ダウン」は、バンドの心情を反映した感動的な楽曲として、ファンに長く愛されています。

制作時の葛藤

しかし、アルバムの制作は順風満帆とはいきませんでした。プロデューサーのマイケル・バインホーンとバンドメンバーの間で、楽曲のアレンジやマスタリングを巡って意見の衝突が頻発。特に、レコーディング経験の浅いジョン・フルシアンテは、バインホーンとの間で何度も激しい議論を交わしたと言います。アンソニー・キーディスは自伝の中で、当時の状況を振り返り、バインホーンとの関係が悪化していった様子を語っています。

最終的に、アンソニーとバインホーンは「ハイヤー・グラウンド」のレコーディング中に激しい口論となり、絶交。この決裂によって、アルバムに収録されたオリジナル楽曲はわずか11曲にとどまりました。また、バンドはキャピトル・レコードのプロモーション戦略にも不満を募らせていたと言います。

収録曲について

アルバムには、以下のような楽曲が収録されています。

グッド・タイム・ボーイズ: アルバムのオープニングを飾る、勢いのあるナンバー。
ハイヤー・グラウンド: スティーヴィー・ワンダーのカバー。レッチリの代表曲の一つ。
サブウェイ・トゥ・ヴィーナス: ファンキーなグルーヴが特徴的な楽曲。
マジック・ジョンソン: アンソニーとフリーが愛するレイカーズについて歌った楽曲。
ノーバディ・ウィアード・ライク・ミー: 個性を肯定するメッセージが込められた楽曲。
ノック・ミー・ダウン: 亡きヒレル・スロヴァクに捧げられた感動的なバラード。
テイスト・ザ・ペイン: フリーがトランペットを演奏する、異色の楽曲。
ストーン・コールド・ブッシュ: フリーのベースソロとジョンのギターソロが聴きどころ。
ファイア: ジミ・ヘンドリックスのカバー。ヒレルが生前に演奏したギターが使用されている。
プリティ・リトル・ディッティ: メロディアスなインストゥルメンタル。
パンク・ロック・クラシック: ガンズ・アンド・ローゼズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」のリフが登場する。
セクシー・メキシカン・メイド: 多様な音楽性が融合した楽曲。
* ジョニー・キック・ア・ホール・イン・ザ・スカイ: アルバムのラストを飾る、壮大なナンバー。

『母乳 - Mother's Milk』は、レッチリの新たな幕開けを告げる作品であると同時に、バンドの苦悩や葛藤が色濃く反映された、エネルギッシュなアルバムです。

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