母趾外転筋

母趾外転筋 (Abductor hallucis muscle)

母趾外転筋は、足の親指である母趾を外転させる（体の中心から外側へ動かす）作用を持つ筋肉です。足の内側に位置し、歩行やバランス保持において重要な役割を果たします。

起始

母趾外転筋は、以下の部位から起始します。

踵骨隆起の内側突起: 踵骨の内側にある骨の隆起部分
屈筋支帯: 足首の内側にある、腱を固定する役割を持つ靭帯
足底腱膜: 足の裏にある、強靭な線維性の膜

これらの起始部から、筋肉は足底を前方に向かって走行します。

腱弓の形成

母趾外転筋は、起始部から腱弓と呼ばれるアーチ状の構造を形成します。この腱弓の下を、以下の腱が通過します。

長指屈筋腱: 足の指を曲げる筋肉の腱
長母指屈筋腱: 母趾を曲げる筋肉の腱

これらの腱は、足根管と呼ばれるトンネル状の構造に収まっており、腱弓によって保護されています。

停止

母趾外転筋は、以下の部位に停止します。

内側種子骨: 母趾の付け根にある小さな骨
基節骨底: 母趾の第一関節（MP関節）の付け根

これらの停止部によって、母趾外転筋が収縮すると母趾が外転する動きが生まれます。

機能

母趾外転筋の主な機能は、以下の通りです。

母趾の外転: 母趾を体の中心から外側へ開く
足のアーチの支持: 足底腱膜とともに、内側の縦アーチを支える
バランス保持: 立位時や歩行時に、足の安定性を保つ

臨床との関連

母趾外転筋の機能不全は、以下のような症状や疾患を引き起こす可能性があります。

外反母趾: 母趾が外側に変形する疾患。母趾外転筋の弱化が原因の一つとなることがあります。
足底筋膜炎: 足底腱膜の炎症。母趾外転筋の機能低下が足底腱膜への負担を増加させ、炎症を引き起こすことがあります。
* 開張足: 足の横アーチが崩れる状態。母趾外転筋の弱化が原因となることがあります。

母趾外転筋の強化は、これらの症状の予防や改善に役立つことがあります。適切なストレッチやトレーニングを行うことで、筋肉の機能を維持・向上させることが重要です。

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