比叡山焼き討ち (1571年)

比叡山焼き討ち

比叡山焼き討ち（ひえいざんやきうち）は、1571年9月12日、織田信長の軍が近江国滋賀郡（現在の滋賀県大津市）に位置する比叡山延暦寺を攻めた歴史的な戦いです。この事件では、信長軍が延暦寺の伽藍を焼き払い、僧侶やその家族を含む多くの命が失われたとされています。

開戦の背景

信長と比叡山の対立の発端は、信長が比叡山の領地を取り上げたことにあります。1569年、天台座主の応胤法親王が寺領の回復を天皇に訴えましたが、信長はこれを無視しました。1570年、信長軍は姉川の戦いで勝利したものの、続く戦いで浅井長政と朝倉義景の連合軍に困難を強いられ、比叡山に立てこもられました。正親町天皇の調停によって和解が成立しましたが、状況は変わりませんでした。

信長は、元亀2年1月に木下秀吉に命じて近江の同盟軍との連絡を断ったのを皮切りに、攻撃の準備を整えます。2月には佐和山城が降伏し、信長はその領土を手中にしました。同年5月、信長は一向一揆との戦闘で勝利し、8月には浅井長政の城小谷城を攻撃し、9月になると信長は比叡山へ目を向けました。

焼き討ちの実行

比叡山の重要性は、京都を見据えた戦略的拠点としての位置にありました。また、延暦寺は信長への反抗勢力の拠点ともなっていました。このため、信長は比叡山の無力化を図り、その決定に至ったとされています。当時の住民や僧侶は根本中堂に集まり、信長の攻撃に備える一方、比叡山からの請願も信長には受け入れられませんでした。

1571年9月12日、この運命の日が訪れます。織田信長の軍は坂本や堅田周辺で放火し、その合図とともに攻撃を開始。記録によれば、信長軍は一気に比叡山の坊舎や経典を焼き払い、僧侶や一般市民から多くの犠牲者が出たと言われています。当時の記録には、数千人が命を落としたとされています。

焼き討ち後の展開

焼き討ちが終わると、信長はその後の処理を明智光秀に任せ、早々に上洛しました。延暦寺や日吉大社は消滅し、寺領は信長の部将たちに分配されました。生き残った僧侶たちは、他の地域に逃れて再興を模索しますが、信長の権威に抗うことは容易ではありませんでした。

戦後、信長が倒れた後、僧侶たちは復興を願い出ますが、簡単には受け入れてもらえず、時間がかかりました。1584年には、山門再興のために寄付金が集められ、やっと再興の兆しが見えました。

比叡山焼き討ちへの評価

比叡山焼き討ちは、信長の政策の一環として行われ、多くの評価が分かれています。信長を非難する意見もあれば、比叡山側の堕落を批判する意見も存在します。特に、比叡山の僧侶たちが当時の社会秩序を乱していたとの指摘もあり、信長の行動が必ずしも否定できるものではなかったという見解もあります。

しかしながら、多くの市民が犠牲となったこの事件は、信長の選択と彼の時代の悲劇を象徴するものとして、多くの歴史家によって再評価されています。近年の調査では、焼き討ちで焼失した建物は限られており、歴史的な定義や意義についての再考が進んでいます。

このように、比叡山焼き討ちは信長の時代の重要な出来事として今でも多くの議論を呼ぶテーマであり、後世においてもその影響は色濃く残り続けています。

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