毛利嘉孝

毛利嘉孝：社会学者、文化研究者、そして現代社会批評家

毛利嘉孝氏は、1963年長崎県生まれの社会学者であり、文化研究、メディア論を専門としています。東京芸術大学大学院国際芸術創造研究科教授として、現在も第一線で活躍されています。

学術的経歴と研究活動

京都大学経済学部卒業後、広告代理店勤務を経て、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジへ留学。ポール・ギルロイ氏らに師事し、文化研究の基礎を築きました。帰国後は、九州大学、東京大学などを経て、2016年から東京芸術大学大学院国際芸術創造研究科教授に就任。

毛利氏の研究は、カルチュラル・スタディーズを基盤に、現代の音楽、美術、メディアといった文化現象を社会科学と人文科学の両面から多角的に考察しています。グローバリゼーション、都市空間、消費社会、そして社会運動など、現代社会の様々な側面を鋭く分析し、数々の著作を発表。これらの著作は、学術的な深みと同時に、一般読者にも分かりやすい平易な文章で書かれており、幅広い層から高い評価を得ています。

東浩紀氏との論争：都市空間と消費社会をめぐる知的対決

2007年、東浩紀氏との論争は大きな注目を集めました。毛利氏は、東氏の『東京から考える』における「ジャスコ化」論を批判。「人間工学的に正しい」公共空間の背後に潜む、政治的・経済的・社会的不均衡を指摘しました。一方、東氏は毛利氏の主張を、軽薄な消費社会批判と共同体主義の理想化という枠組みで捉え、現代消費社会の肯定論を展開。この論争は、都市空間のあり方や、消費社会の抱える問題点といった現代社会の重要な課題を浮き彫りにしました。

主要著作

毛利氏は、単著、共著、編著、翻訳など、多様な著作活動を行っています。その著作リストには、グローバリゼーションと空間、ポピュラー音楽と資本主義、DIY文化、そしてストリートカルチャーといったテーマが並びます。中でも『ストリートの思想――転換期としての1990年代』は、1990年代の社会状況を鋭く分析した代表作として知られ、増補版が2024年に刊行予定です。また、バンクシーに関する著作も出版しており、現代アートと社会運動の関係性についても深い造詣を示しています。

多様な活動

学術活動以外にも、NPO法人アート・インスチチュート北九州理事、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、立教大学などでの兼任講師を務めるなど、多岐にわたる活動を行っています。フジテレビのデジタルマガジン「少年タケシ」での連載「はじめてのDiY」では、実践的なDIYノウハウを紹介するなど、学術研究だけでなく、社会への積極的な関与も続けています。

国際的な視点と影響

ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジでの留学経験は、毛利氏の研究に国際的な視点と幅広い知識をもたらしました。ポール・ギルロイ氏をはじめ、多くの著名な学者との交流を通じて培われた知識や見識は、彼の研究活動の原動力となっていると言えるでしょう。

まとめ

毛利嘉孝氏は、現代社会の複雑な問題を多角的に分析し、独自の視点から示唆に富んだ論考を発表し続ける第一線の社会学者です。その研究活動は、学術界のみならず、現代社会を考える上で貴重な知見を提供し続けています。今後の活躍にも期待が高まります。

もう一度検索