毛細管

毛細管：微小世界の操作を可能にするガラス管

毛細管とは、非常に細いガラス管のことです。その直径は、髪の毛ほどの細さ、つまり内径1ミリメートルに満たないものが一般的です。まるで髪の毛のように細いことから、この名が付けられました。英語ではcapillary、またはキャピラリーと呼ばれます。

毛細管は、その細さを活かして様々な実験で利用されています。特に物理学や化学の実験において、微量の液体を扱う際に欠かせないツールとなっています。その製造方法は驚くほどシンプルです。ガラス管を加熱し、柔らかくした状態から素早く引き伸ばすことで、容易に毛細管を作製できます。

毛細管の最も重要な特性は、毛細管現象を示す点にあります。毛細管現象とは、液体と固体の境界面における分子間力の作用によって、液体がある管の中を重力に逆らって上昇する現象のことです。毛細管に一端を液体に浸すと、液体が管内を上昇していく様子を観察できます。この現象は、液体の表面張力と管壁との付着力とのバランスによって生じます。管が細ければ細いほど、液体はより高く上昇します。

この毛細管現象を利用することで、微量の液体を効率的に採取することができます。例えば、ごく少量の血液を採取する必要がある場合、毛細管を用いることで、精密なサンプリングが可能です。また、採取した液体をろ紙などの担体上に点状にスポット（しみ込ませる）させる操作にも毛細管は用いられます。このスポット操作は、薄層クロマトグラフィーなどの分析手法において重要なステップです。薄層クロマトグラフィーは、混合物中の成分を分離・分析する手法ですが、毛細管を用いた正確なスポット操作が分析結果の精度に大きく影響します。

毛細管は、小型の実験動物からの採血などにも利用されています。微小な血管から少量の血液を採取する必要がある場合、毛細管を用いることで、動物への負担を最小限に抑えながら、正確なサンプリングを行うことができます。

このように、毛細管は、その細さゆえに、肉眼では捉えにくい微小な世界を扱う上で、非常に有用なツールです。微量な液体の操作を可能にする毛細管は、現代の科学技術において、なくてはならない存在となっています。

関連事項

キャピラリー電気泳動：毛細管を用いた電気泳動法。微量の試料を高感度に分析できます。
毛細管現象：毛細管における液体の移動現象。表面張力と濡れ性が重要な役割を果たします。

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