氏名

氏名の法的背景とその変更に関する解説

氏名（しめい）は、個々の人を識別するための基本的な要素であり、氏と名の二つから成り立っています。法律的には、氏は「姓」や「名字」と同義ですが、歴史的には異なる意味を持っていました。現行の戸籍法によって、氏名は戸籍にて各個人の情報として記載されることが定められています（戸籍法第13条第1号）。

氏の法的性格

氏とは、古来より個人がどの血族または家族集団に属するかを示すための制度です。儒教の観点からは、姓が血族を示す概念であり、その下での同姓不娶・異姓不養の原則が存在します。明治民法においては、氏は家族の名称を指し、当時「戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス」と定められました（明治民法第746条）。

戦後の親族法改正時には、日本の習慣と国民情緒を考慮して氏の制度は維持されましたが、家制度は廃止され、氏の法的性格について様々な見解が存在します。以下に主要な説を挙げます。

1. 個人呼称説: 氏は個々人の同一性を示す呼称であるとする説。現代民法学での通説。
2. 血縁団体名称説: 氏は個人が属する血縁集団を示すものとする説。
3. 家族共同体名称説: 氏を家族共同体の名称と捉える見解。
4. 同籍者集団名称説: 氏を同籍者集団の名称であるとする説。
5. 多元的性格説: 氏を多面的に捉え、同一性の明示だけでなく実際の家族生活に共通の呼称としての性格を持つとみる説。

氏の取得

出生と氏

氏名は、出生時に決定され、嫡出子と非嫡出子の扱いも法律に明記されています。嫡出子は父母の氏を称しますが、離婚時には離婚時点の両親の氏を継承します（民法790条関連）。一方、非嫡出子は母の氏を称します。したがって、父が認知した場合でも、必ずしも父の氏を名乗るわけではありません。

新たに生まれた棄児については、市町村長が氏名を付けることになります（戸籍法第57条第2項）。

子の氏の変更

子が両親と氏名が異なる場合、家庭裁判所の許可を得て氏を変更できます（民法791条関連）。また、法定代理人が15歳未満の子の手続きを代行することも可能です。

婚姻・離婚時の氏の変動

夫婦同氏の原則

婚姻の際、夫婦は同一の氏を称することが法律で定められており、これを夫婦同氏の原則と呼びます。これは家族共同体としての実態を反映したものであり、選択的夫婦別[[姓]]制度の導入論も存在します。

復氏の原則

離婚または婚姻の取消しがあった場合、夫婦は婚姻前の氏に戻る原則がありますが、例外的に離婚時の氏を維持することも可能です。

養子縁組と氏の変更

養子は養親の氏を称しますが、婚姻によって氏が変更された場合は、婚姻の際に選んだ氏が優先されます（民法810条）。養子が縁組前の氏に戻る場合も復氏の原則に従います。

氏名の変更手続き

氏の変更

氏を変更したい場合は、家庭裁判所の許可が必要です。具体的には、氏が難解で珍しい場合などが該当します（戸籍法第107条）。

名の変更

名の変更も場合によっては認められており、正当な理由によって家庭裁判所の許可を得て手続きをする必要があります（戸籍法第107条の2）。

まとめ

氏名に関する法律は個人のアイデンティティの根幹を成すもので、さまざまな手続きや法律に則って運用されています。特に氏は法律上のつながりや権利関係にも影響を及ぼします。理解を深めることで、身近な法制度をより良く利用できるでしょう。

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