民放テレビ全国四波化

民放テレビ全国四波化の概要

1986年に開始された「民放テレビ全国四波化」は、地方と都市間の情報格差を是正することを目指した政策です。推進のために当時の郵政省が設けたこの施策は、地域で民放テレビが4局以上視聴できる環境の整備を目指しました。政策が発表された当初は、当時の郵政大臣である佐藤文生が主導しました。

施策の背後にある問題

1983年には、民放テレビが4局以上運用されている地域は全国において11地域に限られていました。これにより、情報の入手機会に地域間の大きな差が存在しました。この状況を改善するため、民放テレビの電波割り当ての計画が進められ、1982年に初期の基本方針が制定されました。

1985年には、この基本方針の一部が改変され、「全国各地における（民放）受信機会平等の実現を図る」ことが求められ、民放テレビ局は、全47都道府県で最低4局の受信が可能になる予定が示されました。特に、民放テレビの主要ネットワークであるJNN、NNN、FNN、ANNの4大系列が全て揃うことが計画されたのです。

第一次施策の実行

1986年1月18日、全国四波化の第一段階として青森、秋田、岩手、山形、富山、石川、長崎の7地域に対して第3局目の周波数が割り当てられました。その後、鹿児島に第4局目、北海道に第5局目の周波数が設定されるなど、地元テレビ局の新規開局が進展します。1989年には福岡に第5局、1990年には山口、愛媛、大分にそれぞれ第3局が開局し、全国規模で民放テレビ局の拡充が図られました。

施策の成果と課題

この政策によって、岩手、山形、長野、石川、愛媛、長崎、熊本、鹿児島の各県で民放テレビが4局体制を確立しましたが、一部の地域では当初の目標には届きませんでした。青森、秋田、富山、山口、高知、大分、沖縄では4局体制には至らず、平成新局が開局しても3局体制に留まる地域もありました。

また、民放テレビ局の開局は視聴率競争やスポンサー獲得の競争の激化、不況の影響による収入の減少などから、開局数の増加が困難になり、1997年4月にはこの施策は事実上終了しました。その結果、山梨、福井、鳥取、島根、徳島、佐賀、宮崎の地域では新規の民放テレビ局が開局されないままとなりました。特に山梨や鳥取、島根では新局の設立が全く行われなかったのです。

結果と現在の状況

今日では、情報格差是正の観点から、地上波放送のエリア拡大を考慮する動きが見られています。2022年には新たな放送対象地域の定義や、複数県での同一番組放送の制度新設が議論されています。主に地方のマスメディア間で影響力が強い局と、キー局との立場の違いを背景に、視聴者に適した情報をどのように届けるかが今後の大きな課題となるでしょう。地方のテレビ局が多様な情報を効果的に届けるために、どのように運営されるべきか、地域独自の発信ができるのかが、今後の健全なメディア環境の鍵となります。

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