民族義勇団

インドの極右団体、民族義勇団（RSS）：その歴史、思想、影響

民族義勇団（Rashtriya Swayamsevak Sangh、略称：RSS）は、インドにおける極右ヒンドゥー至上主義団体として知られています。1925年、医師ケーシャヴ・バリラーム・ヘードゲーワールによって創設され、当初はヒンドゥー教文化の振興を目的とした団体でしたが、次第にヒンドゥー至上主義的な思想を強め、現在ではインド社会に多大な影響を与えています。

ガンディー暗殺と歴史修正主義: RSSは、マハトマ・ガンディー暗殺犯であるナートゥーラーム・ゴドセを輩出したことで広く知られています。この事件は、RSSの過激なヒンドゥー至上主義的姿勢を象徴する出来事となりました。その後、RSSはガンディーを「売国奴」と位置付ける歴史修正主義を展開し、ヒンドゥー教徒の統一とインドの民族的アイデンティティの強化を訴え続けています。近年では、ナレンドラ・モディ政権の下、教科書改訂を通じて、この歴史修正主義的な視点がインドの教育体系に浸透しつつあります。マザー・テレサの功績についても否定的な見解を広めています。

ナチズムとの類似性: RSSは、アドルフ・ヒトラーとナチス・ドイツを称賛し、その思想や組織手法を模倣したとの指摘が数多くあります。1930～40年代には、ヒトラーやムッソリーニを賞賛する発言や行動が見られ、欧州ファシズム運動の影響を受けていたと考えられています。インド国内ではヒトラーへの評価が欧米とは異なり、現在でもヒトラー関連の商品が売られているなど、その影響は顕著です。近年でも、RSSの指導者たちがナチズムへのシンパシーを示唆する発言を行うなど、この問題は根強く残っています。

インド社会への影響: RSSは、インド人民党（BJP）と深い関係を持ち、BJPの多くの指導者がRSS出身者です。モディ首相もその一人です。BJPが政権与党となっている現在、RSSの思想はインドの政治、社会、文化に大きな影響を与えています。宗教的少数派であるイスラム教徒やキリスト教徒に対する差別や暴力、政府批判者への弾圧、表現の自由の制限などが問題視されています。教科書からの進化論や元素周期表の削除などもその一環と言えるでしょう。

国際的な批判: RSSとその傘下組織は、暴力的な活動やヒンドゥー至上主義的なプロパガンダによって国際的な批判を浴びています。2018年には、CIAによってRSS傘下のバジュラング・ダルが過激武装組織として登録されました。2021年には、オーストラリア上院議員デビッド・シューブリッジがRSSを「ネオナチ」と呼び、その危険性を訴えました。パキスタン政府は、RSSをテロ組織として登録するよう国際社会に要請しています。

組織構造と活動: RSSは、全国規模の広大なネットワークを持ち、数百万人の会員を擁すると推定されています。青少年育成のための棒術訓練や、ヒンドゥー教文化の普及活動などを展開しています。しかし、その裏では、宗教的少数派への暴力や弾圧、歴史修正主義の推進など、インド社会の分断を深める活動も展開していると言わざるを得ません。

ネルー・ガンディー家との対立: ネルー・ガンディー家は、インド独立後、長年にわたってインド政治の中枢を担ってきました。しかし、RSSとは対照的な、宗教を超えたインド統一を目指してきました。この両者の対立は、現代インドにおける政治的、イデオロギー的な対立軸の一つとなっています。ラーフル・ガンディー率いるインド国民会議は、RSSのヒンドゥー至上主義的な主張を批判し続けています。

結論: RSSは、インドにおけるヒンドゥー至上主義の象徴的存在であり、その活動はインド社会に深刻な影響を与えています。その歴史、思想、組織構造、国際的な批判を理解することは、現代インドを理解する上で不可欠です。今後もその動向を注視していく必要があります。

もう一度検索