気比斉晴

気比斉晴（けひ なりはる）は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した武将です。越前国（現在の福井県）の氣比神宮の大宮司という要職を務め、同時に越前金ヶ崎城の城主でもありました。彼の生涯は、激動の時代の中で、忠義を尽くし、壮絶な最期を迎えた武将として、後世に語り継がれています。

斉晴は、建武3年/延元元年（1336年）の湊川の戦い後、後醍醐天皇の皇子である尊良親王と恒良親王、そして新田義貞、脇屋義助、藤原行房、新田義顕といった南朝方の要人たちが、越前金ヶ崎城に身を寄せた際、父である気比氏治と共に彼らを迎え入れました。この時期、金ヶ崎城は南朝方の重要な拠点の一つとなり、斉晴は彼らの滞在を支え、南朝勢力の維持に尽力しました。

しかし、翌年の建武4年/延元2年（1337年）、金ヶ崎城は足利尊氏率いる北朝軍の攻撃を受け、金ヶ崎の戦いが勃発しました。北朝軍は兵糧攻めを行い、城内の兵糧は尽き、状況は極めて厳しくなりました。斉晴は、この絶望的な状況の中で、南朝の希望を繋ぐために、恒良親王を舟に乗せ、蕪木浦（現在の福井県南条郡）まで脱出させるという決断を下しました。これは、南朝の血筋を絶やさないための、斉晴の深い忠誠心と戦略眼を示す行動でした。

恒良親王を脱出させた後、斉晴は金ヶ崎城に戻りました。城内では父・気比氏治と共に、もはやこれまでと覚悟を決めたのでしょう。同年3月6日、斉晴と氏治は、落城の際に共に自害し、その生涯を閉じました。この壮絶な最期は、武士としての忠義と誇りを示すものとして、歴史に刻まれました。

斉晴の功績は、後世にも認められ、大正4年（1915年）には、朝廷より従四位が追贈されました。これは、彼が南朝のために尽くした忠誠心が、時代を超えて評価された証と言えるでしょう。

現在、金崎宮として、かつての金ヶ崎城の跡地には神社が建立されており、気比斉晴は、父・気比氏治と共に、その御祭神として祀られています。この神社は、斉晴の忠義と勇敢さを後世に伝える場所として、多くの人々に親しまれています。金崎宮の存在は、斉晴が単なる歴史上の人物ではなく、人々の心の拠り所として、今もなお生き続けていることを示しています。

気比斉晴は、その生涯を通して、武将としての勇猛さ、そして主君への忠誠心を貫きました。彼の行動は、激動の時代を生き抜いた人々の模範となり、後世の私たちに、勇気と忠義の大切さを教えてくれます。彼の名は、日本の歴史の中で、永遠に語り継がれることでしょう。

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