水津功

水津 功

1962年に山口県で生まれた水津功（すいづ いさお）は、日本のデザイン教育者および環境デザイナーとして知られています。愛知県立芸術大学で教授を務め、名古屋大学では客員教授として教鞭を執りながら、多岐にわたる環境デザインの実践と研究活動を展開しています。

経歴

水津氏は、まず東京藝術大学でデザインを深く学びました。1986年に美術学部デザイン科を卒業後、同大学大学院に進学し、美術研究科修士課程で環境造形デザインを専攻、1988年に修了しています。

大学院修了後、1988年から1996年までの約8年間、大手建設会社である清水建設の設計本部で実務経験を積みました。この期間に、商業施設や病院などの設計に関わっています。1996年には自身のデザインスタジオ「WaterMarkDesign.lab」を設立し、独立した活動を開始しました。

同年、愛知県立芸術大学に専任講師として着任し、教育者としてのキャリアをスタートさせました。2000年からは名古屋大学工学部でも非常勤講師を務め、2003年には愛知県立芸術大学の准教授に昇進。その後、2014年に同大学の教授となり、デザイン教育における中心的な役割を担うようになります。さらに2015年からは、名古屋大学未来社会創造機構の客員教授としても活動しています。

主な活動と業績

水津氏の活動は、都市のランドスケープや建築の外構デザインから、インテリア、映像、アートプロジェクト、そして景観に関する研究活動まで、非常に広範にわたります。

建設会社時代には、小石川パークタワー、兼松ビル、順天堂医院、栗田工業山口事業所、御堂筋セイコー大阪ビル、裾野倶楽部など、様々な施設のデザインを手がけました。これらの初期の作品は、後の活動の礎となっています。

大学に移ってからは、教育活動と並行して、多様なプロジェクトに携わります。例えば、味の素医薬品研究所や神慈秀明会メインゲートのランドスケープ提案、都市計画道路志段味笹ケ根線の環境デザイン提案などがあります。また、研究所の委託を受けて「これからのランドスケープデザインコンセプト」に関する報告書をまとめたり、東京都や厚生省の依頼で硫黄島慰霊碑等の整備提案を行ったりもしました。

病院のランドスケープデザインにも多数関与しており、癌研有明病院などのデザインコンセプト提案があります。企業の工場群のマスタープラン提案や、臨海超高層集合住宅のランドスケープ提案など、大規模なプロジェクトも手がけています。

アート分野では、映像作品やインスタレーションを制作。三重県多気町での液晶工場壁面への映像投影作品「Snow Crystal」や、音と光のインスタレーションユニット「dbcd」としての活動があります。

近年の活動では、地域やコミュニティとの連携、景観資源の活用と共有、そしてアートによる地域活性化に重点が置かれています。例えば、2004年から2005年にかけては、浜松市・浜名湖国際園芸博覧会百華園のランドスケープや16の庭園デザインを担当しました。

愛知県碧南市では、2005年から長期にわたり「景色を集める会」という市民参加型の景観調査活動を主導しました。市民と共に地域の心に残る景色を発掘・記録し、その成果を景観研究や具体的な景観デザインプロジェクトに活かしています。特に、碧南市名鉄軌道跡地公園計画では、市民や地場産業との協力を通じた公園デザインに取り組みました。また、「みずいろベンチ」プロジェクトでは、市民に選ばれた場所にシンボルとなるベンチを設置し、景観資源の共有を試みました。

愛知県では、里山実験場「あいちサトラボ」の企画・運営に2007年から2014年まで関わりました。これは、県民が主体的に里山について学べる公園を目指すものであり、その成果は都市公園コンクールでの会長賞受賞という形で評価されています。

瀬戸内国際芸術祭にも参加しており、2010年には女木島で空き家をアートサイトに再生する「MEGIHOUSE」を常設展示として実現させました。これは、古民家という地域の資源を活用し、アートを通じて新たな価値を生み出す試みです。

研究活動としては、景観資源の発掘・評価における画像情報の役割に関する研究、景観の共有を支援するシステム「LANDBANK」の開発、LED光源による都市の光環境デザインに関する研究など、多角的な視点から景観や環境を考察しています。

さらに、新しいデザインの試みも行っており、「KAKUREMINO」のような場所性と連動したプロダクトデザインや、「AGNI」のような日本の森林問題に取り組む鋳造薪ストーブのデザインなども手がけています。

受賞歴

その長年にわたる活動は国内外で高く評価されており、多くの賞を受賞しています。初期にはKAWATETSU Street Furniture competition優秀賞、東京ガス建築環境デザインコンペティション優秀賞（複数回）、SDA賞、BCS賞、インターイントラ・スペースデザイン賞などを受賞。近年では、あいちサトラボでの活動が、2013年の第29回都市公園コンクール日本公園緑地協会会長賞や2014年のランドスケープコンサルタンツ協会賞優秀賞といった、公園・緑地分野の主要な賞を受賞しています。

所属学会

日本デザイン学会に所属し、学術的な活動も積極的に行っています。

水津功氏は、環境デザインの実践、景観に関する研究、アートによる表現、そして地域社会との連携という多角的なアプローチを通じて、人間と環境の豊かな関係性を探求し続けています。その活動は教育、研究、実務の各分野において、後進の育成と新たな価値創造に貢献しています。

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