水車館の殺人

水車館の殺人：館シリーズ第二弾、不可解な事件の謎に迫る

綾辻行人による長編推理小説『水車館の殺人』は、彼の代表作である「館シリーズ」の第二作目です。古城を思わせる異様な雰囲気を醸し出す屋敷「水車館」を舞台に、複雑に絡み合う人物関係と巧妙なトリックが散りばめられた、本格推理小説として高い評価を得ています。

物語は、一年前の嵐の夜に起きた不可解な事件から始まります。水車館の塔から転落死した女性、そして、ありえない状況下で姿を消した男。さらに、貴重な絵画が盗まれたという事件も発生していました。これらの事件は、ある程度の解決を見たかに見えたものの、探偵である島田潔の登場によって、再び惨劇の幕が開けることになります。

島田潔は、本作の主人公であり探偵です。彼は以前から関係のあった古川と再会し、水車館で起こる連続殺人事件の真相解明に挑みます。水車館には、一年前の事件に深く関わりのある様々な人物が住み着いています。

物語の中心人物となるのは、莫大な遺産と水車館を受け継いだ故人、藤沼一成とその息子である藤沼紀一です。紀一は過去のある事故で顔と手足に重傷を負い、仮面をつけ、車椅子生活を送っています。彼は妻の由里絵と共に水車館に隠棲しています。由里絵は、藤沼一成の弟子であった故・柴垣浩一郎の娘であり、紀一と結婚しています。

水車館には、倉本庄司という執事や、根岸文江という元看護婦、野沢朋子という使用人が住み込んでいます。根岸は一年前の事件で命を落としており、その死にも謎めいた部分が残されています。他にも、藤沼紀一の友人である正木慎吾、美術商の大石源造、美術史教授の森滋彦、外科医の三田村則之などが登場し、それぞれが事件に何らかの形で関わっています。

そして、一年前の事件の夜に失踪した古川恒仁という人物の存在も、物語全体に大きな影を落としています。彼は藤沼家の菩提寺の副住職であり、島田潔とも大学時代に親交がありました。これらの登場人物たちは、それぞれの思惑や秘密を抱え、複雑に絡み合った人間関係を形成しています。

『水車館の殺人』は、密室殺人のトリックや、不可能犯罪と思わせるような状況設定などが巧みに用いられており、読者は犯人探しに翻弄されることになります。綿密に構築された謎解きと、予想外の結末が待ち受けている、まさに本格派推理小説と言えるでしょう。

本書は、1988年に講談社ノベルスより刊行され、その後、講談社文庫、新装改訂版、YA!エンターテインメントなど、複数の版で刊行されています。綾辻行人自身も、新装改訂版において本書を決定版と位置付けています。

『水車館の殺人』は、『十角館の殺人』に続く館シリーズ第二作目として、本格ミステリファンのみならず、多くの読者を魅了し続けている作品です。謎解きの面白さ、そして登場人物たちのドラマを通して、読者は水車館という閉鎖的な空間の中で繰り広げられる、人間の業と心の深淵に触れることになるでしょう。

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