水酸化亜鉛

水酸化亜鉛：多様な性質を持つ亜鉛化合物

水酸化亜鉛は、化学式Zn(OH)₂で示される亜鉛の水酸化物です。白色の固体として存在し、その合成法、結晶構造、そして化学的性質は多岐に渡ります。

合成法

水酸化亜鉛はいくつかの方法で合成できます。代表的な方法として、硫酸亜鉛などの亜鉛塩水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加える方法があります。この方法では、無定形コロイド状の白色沈殿として水酸化亜鉛が得られます。この反応は、亜鉛イオンと水酸化物イオンの単純な結合反応として理解できます。

さらに、酸化亜鉛を熱濃水酸化ナトリウム水溶液に溶解後、希釈し、数週間放置することでε-相の水酸化亜鉛結晶を得る方法も知られています。この過程では、まず酸化亜鉛が水酸化物イオンと反応してテトラヒドロキシド亜鉛酸イオン[Zn(OH)₄]²⁻を形成し、その後、徐々にε-相の水酸化亜鉛へと変化します。

別の合成法として、硫酸亜鉛の希薄水溶液にアンモニア水を加える方法があります。この場合、最初に生成する粗沈殿を濃アンモニア水に溶解させ、アンミン錯体水溶液を作製します。この溶液を濃硫酸入りのデシケーター中で放置すると、アンモニアと水が硫酸に吸収され、ε-相の水酸化亜鉛結晶が析出します。この方法では、アンモニアが錯体形成に関与することで結晶成長が制御されます。

物理的および化学的性質

水酸化亜鉛は、非晶質の無定形のものに加え、α、β、γ、δ、εの5種類の同質異像が存在するとされています。これらのうち、斜方晶系のε-相が最も安定な構造です。ε-相の結晶構造は、OHを共有したZn(OH)₄四面体が基本単位となっています。一方、α-相は六方晶系の水酸化カドミウム型構造を取ります。

水への溶解度は非常に低く、希酸には容易に溶解します。溶解度積(Ksp)は1.2×10⁻¹⁷と非常に小さく、水溶液中ではほとんど解離していません。アルカリ性水溶液では、容易に溶解してテトラヒドロキシド亜鉛酸塩[Zn(OH)₄]²⁻を生成します。また、アンモニア水にも溶解し、正四面体型4配位のテトラアンミン亜鉛イオン[Zn(NH₃)₄]²⁺と呼ばれる錯体を形成します。

水酸化亜鉛は、約125℃に加熱すると脱水し、酸化亜鉛ZnOと水H₂Oに分解します。

錯生成平衡

[亜鉛]]イオンと水酸化物イオンの間には、複数の錯体が生成する平衡が存在します。逐次錯生成定数(Ki)を用いて、これらの平衡を記述することができます。水酸化亜鉛の生成、さらにヒドロキソ錯体の生成、そしてテトラヒドロキシド亜鉛酸イオンの生成まで、複数の段階的な平衡が考えられます。それぞれの平衡定数(Ki)および累積生成定数(βi)は、実験的に決定されています。これらの平衡定数は、水酸化亜鉛の溶解度やアルカリ性溶液での挙動を理解する上で重要です。さらに、水酸化亜鉛の酸解離定数]および塩基解離定数(pKb)も、これらの平衡定数から計算することができます。これらの値は、[[水酸化亜鉛の水溶液におけるpH制御などに役立ちます。

まとめ

水酸化亜鉛は、合成法や結晶構造、化学的性質に多様性を持つ化合物です。その性質は、様々な用途に利用されています。

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