永沢勝雄

永沢勝雄

永沢 勝雄（ながさわ かつお、1904年4月13日 - 1985年2月22日）は、昭和期に活躍した将棋棋士です。栃木県佐野市に生まれ、将棋の道に入り飯塚勘一郎八段に師事しました。棋士番号は21です。

高等学校を卒業後、1929年（昭和4年）に正式に飯塚勘一郎八段の門下生となり、将棋棋士を目指しました。入門の翌年、1930年（昭和5年）には早くも初段に昇段し、順調に実力をつけ、1937年（昭和12年）には四段へと昇段、晴れてプロ棋士としての第一歩を踏み出しました。

第二次世界大戦が終結し、将棋界でも戦後の体制として新たな棋戦が企画されました。中でも順位戦は大きな柱となるはずでしたが、永沢はこの新しい制度の理念に必ずしも賛同せず、順位戦への参加を見送る決断をしました。このことがきっかけとなり、1946年（昭和21年）には現役を退くことになります。

しかし、対局の場から離れた後も、永沢は将棋界のために尽力しました。特に、プロ棋士の卵を育成する奨励会の運営に携わり、幹事として多くの若手棋士の成長を見守りました。また、永沢は文才に恵まれており、その才能を活かして観戦記の執筆に情熱を注ぎました。

かつて発行されていた将棋専門誌「将棋研究」および改称後の「将棋評論」にも寄稿し、読者に将棋の魅力を伝えました。ただし、「将棋評論」への誌名変更に伴い、発行元の将棋研究会からは退会しています。

永沢の文筆活動で最も広く知られているのは、朝日新聞に掲載された名人戦の観戦記でしょう。1949年（昭和24年）から1966年（昭和41年）までの約18年間にわたり、「仏法僧」という独特なペンネームを用いて、将棋界の最高峰の戦いを臨場感豊かに描写しました。その文章は多くの将棋ファンに愛されました。

現役引退後も、その功績や将棋界への貢献が認められ、昇段しています。1948年（昭和23年）に五段、1950年（昭和25年）に六段へ昇段しました。さらに、1974年（昭和49年）11月3日には、将棋界への長年の寄与を称える意味で、表彰感謝の日に贈七段の称号を贈られました。

永沢の人柄について、当時の奨励会員であり、後に九段となった原田泰夫は、永沢が奨励会幹事長として若手棋士たちを分け隔てなく、公平に温かく見守っていたと述懐しています。また、歩くことが好きで、話し上手であり、そして何よりも文章が軽妙で素晴らしい才能を持っていたと評しています。私生活では、各地の寺社を巡る巡礼や読書を楽しみ、囲碁も嗜むなど、多趣味な一面もありました。

1985年（昭和60年）2月22日に80歳でその生涯を閉じました。永沢の将棋界における功績を称え、没日と同日付で八段が追贈されました。

彼の主な昇段履歴は以下の通りです。

1929年：飯塚勘一郎八段門下に入門
1930年：初段昇段
1937年：四段昇段（プロ入り）
1946年：現役引退
1948年：五段昇段
1950年：六段昇段
1974年11月3日：七段昇段（贈七段）
1985年2月22日：死去、同日付で八段追贈

永沢勝雄は、棋士としての活動期間は比較的短かったものの、引退後の奨励会での育成や、特に「仏法僧」としての観戦記執筆を通じて、将棋文化の普及と発展に貢献した人物として記憶されています。

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