永遠の序曲

カンサスが1976年にリリースした通算4作目のスタジオアルバム『永遠の序曲』（Leftoverture）は、バンドのキャリアにおける大きな転換点となった作品です。

それまでのアルバムでハードロックとプログレッシブロックの要素を巧みに組み合わせた独自の音楽性を追求してきたカンサスでしたが、本作で初めて全米ビルボードチャートのトップ10入りを果たし、商業的な成功と批評的な評価を両立させることに成功しました。

アルバムの爆発的なヒットのきっかけとなったのは、収録曲の中からシングルカットされた「伝承（Carry On Wayward Son）」です。この楽曲が映画『幸せの旅路』の主題歌として使用されたことで広く注目を集め、全米ビルボード・シングルチャートで最高11位まで上昇する、バンドにとって初めてのメジャーヒットとなりました。このシングルの成功がアルバム全体の売上を強力に後押しし、『永遠の序曲』はビルボード・アルバムチャートで最高5位を記録。その後もロングセラーを続け、最終的には400万枚を超えるセールスを記録するモンスターアルバムとなりました。

本作の楽曲制作は、ギタリスト兼キーボーディストのケリー・リヴグレンが中心的に担いました。アルバムに収められた楽曲の大部分は彼の作曲によるものであり、ドラマーのフィル・イハートは当時のリヴグレンの創作能力がまさに「ピークに達していた」と述懐しています。一方、リードヴォーカルのスティーヴ・ウォルシュは、作曲面ではリヴグレンに多くの部分を任せましたが、その圧倒的なヴォーカルパフォーマンスでアルバム全体に生命を吹き込みました。

アルバムの音楽性は、カンサスらしい力強いハードロックサウンドを基盤としつつ、ヴァイオリンを取り入れたメロディアスなパートや、複雑な楽曲構成といったプログレッシブロックの要素が見事に融合しています。大ヒット曲「伝承」以外にも、「壁（The Wall）」や「奇跡（Miracles Out Of Nowhere）」など、バンドの高い演奏能力と作曲センスを示す佳曲が多数収録されています。特にアルバムの最後を飾る「超大作（Magnum Opus）」は、タイトル通り8分を超える演奏時間を持つ壮大なインストゥルメンタル楽曲で、6つのパートから構成されており、バンドの音楽的な野心を示す一曲となっています。

『永遠の序曲』に収録されている主な楽曲は以下の通りです。

伝承（Carry On Wayward Son）
壁（The Wall）
深層心理（What's On My Mind）
奇跡（Miracles Out Of Nowhere）
挿入曲（Opus Insert）
少年時代の謎（Questions Of My Childhood）
黙示録（Cheyenne Anthem）
超大作（Magnum Opus）

『永遠の序曲』は、カンサスに商業的な成功をもたらしただけでなく、彼らの独特な音楽スタイルを確立し、その後の活動の重要な基盤を築いた作品として、ロック史において特別な地位を占めています。特に「伝承」は、時代を超えて愛され続けるアメリカンロックのスタンダードナンバーとして知られています。

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