永野賢

永野賢：国語学への多大な貢献

永野賢（1922年3月5日 - 2000年10月3日）は、20世紀日本の国語学を代表する学者の一人です。東京帝国大学国文科卒業後、国立国語研究所員、東京学芸大学教授を歴任し、1985年には名誉教授の称号を得ています。専門は国語教育、文法、国語学史で、特に山本有三研究においては第一人者として知られています。これは、彼の妻の父が山本有三であったという個人的な繋がりも深く関わっています。

研究内容と影響

永野賢の研究は多岐に渡り、国語教育の現場に大きな影響を与えました。中でも、1953年に発表した論文「表現文法の問題：複合辞の認定について」は高く評価されています。この論文で彼は「複合辞」という概念を提示し、それまで十分に注目されていなかった「からには」「かと思うと」のような、複数の語が一体となって機能する表現群に着目しました。この研究は、後の国語学における「付属語」研究に大きな影響を与え、多くの研究者による発展的な研究を生み出しました。

また、永野賢は長年にわたって『解釈と鑑賞』誌に「山本有三評伝」を連載（1980-1983年）、さらに単著『山本有三正伝 上』（1987年）を著すなど、山本有三研究にも情熱を注ぎました。「下巻」の執筆は未完に終わっていますが、彼の緻密な研究は、山本有三作品理解の深化に大きく貢献しています。

著書と教育への貢献

永野賢は、数多くの著書を著し、国語教育に携わる教師や学生にとって貴重な指針となっています。彼の著書は、文法、文章論、国語学史など幅広いテーマを網羅しており、実践的な指導法に関する記述も多く含まれています。主な著書として以下が挙げられます。

『中学生のためのことばの教室』
『学校文法概説』
『学校文法文章論』
『実践学校文法』
『にっぽん語考現学』
『国語の素養』
『日本人の日本語』
『悪文の自己診断と治療の実際』
『にっぽん語風俗学』
『伝達論にもとづく日本語文法の研究』
『文章論詳説』
『ことばの風俗誌』
『漢字を食べる本』
『文章論総説』
『国語教育における文章論』
『山本有三正伝 上巻』
『若い教師のための文章論入門』
『文法研究史と文法教育』
* 『感動中心の文学教育批判』

これらの著書は、永野賢の深い学識と、国語教育に対する熱い思いを反映したものです。彼の研究と教育活動は、現代の国語学と国語教育の礎を築き、後進の育成にも大きく貢献しました。

まとめ

永野賢は、国語学の第一線で活躍した著名な学者であり、国語教育、文法、国語学史、そして山本有三研究においても、多大な功績を残しました。「複合辞」に関する研究は、その後の国語学研究に大きな影響を与え、彼の著書は現在でも国語教育の現場で活用されています。彼の研究と教育活動は、現代の国語学と国語教育に深い足跡を残し、後世に大きな影響を与え続けています。

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