江井康胤

江井康胤（えねい やすたね）は、1971年7月20日に千葉県で生まれた、社会人野球の元選手である。主に内野手、特に三塁手として活躍した右投右打の選手で、現役時代は東北マークスなどに所属した。

大学時代と日本代表経験

野田北高校を卒業後、野球強豪校として知られる東北福祉大学に進学した。大学時代は、強打の内野手として目覚ましい活躍を見せ、全日本大学野球選手権大会への出場も経験した。特に打撃面では、仙台六大学リーグにおいて、首位打者と打点王にそれぞれ二度輝くなど、大学野球界でも屈指の成績を残した。その実力が認められ、4年時には日本代表に選出され、日本・キューバ対抗戦に出場した。これが彼のキャリアにおける唯一の日本代表経験である。本来であれば1994年に大学を卒業する予定だったが、大学時代に負った右肩の怪我のリハビリのため、一年間大学に聴講生として残り、治療と回復に努めた後、1995年にJT（日本たばこ産業）に入社した。

JTでの輝かしいキャリア

JTに入社すると、江井氏はすぐに「3番・サード」というチームの核となる定位置を掴んだ。彼の打撃スタイルは、長打力よりもアベレージヒッターとして際立っており、広角に打ち分ける技術と高い打率を誇った。2002年には、グランドスラム誌が発表した公式戦打率の集計において、全国の並み居る強打者を抑えて1位となるなど、その打撃の正確性は全国レベルでも突出していた。JTの主力選手として活躍する傍ら、東北地区の他チームの補強選手としても度々選ばれ、東北を代表する打者としての評価を不動のものとした。

JT廃部、そして最後の都市対抗

しかし、江井氏のJTでのキャリア終盤に、衝撃的な事態が訪れた。2003年末、JT野球部が2004年シーズン限りで廃部となることが発表されたのである。チーム内に動揺が広がる中で、既にチームのベテランとなっていた江井氏は、リーダーシップを発揮。若い選手たちを精神的に支え、チームを鼓舞し続けた。その努力が実を結び、チームは第75回都市対抗野球大会への出場権を獲得。大会では、同じ東北代表として出場した七十七銀行と共に快進撃を続け、これまで阻まれてきた準々決勝を突破し、球団史上初の準決勝進出という歴史的な快挙を達成した。準決勝では惜しくも王子製紙に敗れ、優勝には手が届かなかったものの、廃部を目前にしたJT野球部は、江井氏を中心にチーム一丸となり、最後の舞台で最高の輝きを放った。

廃部後の継続的な活躍と指導者へ

JT野球部の廃部後も、江井氏はJTでの勤務を続けながら、野球から離れることはなかった。同じく仙台市に拠点を置くクラブチーム、NTTグループ東北マークスへ移籍し、ここでも引き続き内野のレギュラーとして活躍した。30代半ばを過ぎてもなお、都市対抗野球大会の補強選手に選ばれるほど、その高い技術レベルと体力は衰えることがなく、長きにわたり現役生活を続けた。

現役引退後は、指導者としてのキャリアをスタートさせた。東日本国際大学野球部で助監督を務め、学生たちの育成に尽力。さらに、2023年秋からは、東日本国際大学昌平高校の野球部監督に就任し、高校野球の舞台で新たな挑戦を始めている。

江井氏は、1994年の日本・キューバ対抗戦で日本代表に一度だけ選出された経歴を持つ。また、社会人野球の最高峰である都市対抗野球大会では、三塁手として二度（2001年、2004年）優秀選手賞を受賞しており、その卓越した守備と打撃は高く評価されている。選手として、リーダーとして、そして指導者として、江井康胤氏は東北の野球界に多大な貢献を続けている人物である。

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