江口幹

江口幹（えぐち かん、1931年2月24日 - ）は、日本のアナキズム、社会主義運動に深く関わった思想家、文筆家、翻訳家です。岩手県に生まれ、父親は軍人でした。成城中学校を中退後、16歳で家出し、新聞社の給仕として働きながら、平民新聞社でアナキズム思想に触れました。その後、大阪で日労会議大阪地方会議の書記を務め、社会運動に関わります。

1949年には全日労の書記となり、1950年には自由社会主義同盟を結成するなど、初期から社会主義運動の中心的な役割を担いました。1953年には交通経済新報社に入社し、1960年には交通問題調査会で働くなど、ジャーナリズムと社会問題への関与を続けました。

1965年から1966年にかけてフランスに遊学し、帰国後は著作と翻訳活動に専念します。彼の著作には、社会のあり方や人間の自由について深く考察したものが多く、『方位を求めて』、『黒いパリ』、『評議会社会主義の思想』、『文明変革の視点』、『自由を生きる 奇妙な家出少年の歩み』、『現代をいかに生きるか 時代認識の方法』、『疎外から自治へ 評伝カストリアディス』などがあります。これらの著作では、既存の社会構造や権威に対する批判的な視点と、より良い社会を求める強い意志が示されています。

翻訳家としての江口幹は、ダニエル・ゲランやコルネリュウス・カストリアディスなど、アナキズムや社会主義思想の重要な著作を日本に紹介しました。ダニエル・ゲランの『現代のアナキズム』、『エロスの革命』、『現代アナキズムの論理』、コルネリュウス・カストリアディスの『エコロジーから自治へ』、『社会主義の再生は可能か マルクス主義と革命理論』、『社会主義か野蛮か』、『東欧の変革、私たちの変革』、『想念が社会を創る 社会的想念と制度』、『迷宮の岐路』など、多数の翻訳を手がけています。これらの翻訳を通じて、江口幹は日本の社会思想界に大きな影響を与えました。

江口幹の思想は、アナキズム、社会主義を基盤としつつも、既存のイデオロギーに囚われることなく、常に社会の変革と人間の自由を追求するものでした。彼の著作と翻訳は、現代社会における様々な問題に対する考察を深め、未来への希望を示唆するものです。特にカストリアディスの思想を日本に紹介した功績は大きく、彼の自治や社会変革に対する思想は、現代社会においても重要な示唆を与えています。

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