江戸三十三観音札所

江戸三十三観音札所について

江戸三十三観音札所（えどさんじゅうさんかんのんふだしょ）は、東京都の区部に位置する33の寺院と1つの番外寺院からなる観音の霊場です。1976年に改訂された「昭和新撰江戸三十三観音札所」として広く知られるこの札所群は、元々江戸時代から続く観音巡礼の伝統に基づいていますが、戦後の廃仏毀釈などの影響で、現在の寺院は当時のものの半分以上が入れ替わっています。

江戸三十三観音札所の歴史

江戸三十三観音札所のルーツは、江戸時代に遡ります。当時、西国三十三所や坂東三十三観音などの巡礼が流行し、その影響を受けて江戸でも新たな札所が設けられるようになりました。これらの巡礼を「写し霊場」と呼び、特に西国三十三所を模写した形で33寺院が選定されたのです。

江戸時代中期には、20を超える西国写し霊場が江戸市中に存在したという記録も残っています。これは、当時の女性たちが自由に外出できない社会的背景の中で、近場の巡礼に参加することで風俗の解放を求めたものとしても解釈されています。「幕府の厳しい規制下で自由に衣装の本能を謳歌できない都市女性が、近くの巡礼に仮託して、風俗の解放を求めた」という説もあります。

江戸三十三観音札所は、元禄年間に設定された観音巡礼の一種とされており、その具体的な出所は「武蔵三十三箇所」や「江都古来三十三箇所」といった古地名に関わるものです。田上善夫によれば、現在の江戸三十三観音札所の起源は、寛文8年（1668年）に選定された「江都三十三所観音」とされています。

札所の特徴

現在の江戸三十三観音札所には、大観音寺や大安楽寺といった明治時代に創建された寺院や、1951年に開創された世田谷山観音寺など、近現代に設立された寺院も含まれています。田上の研究によると、「江都三十三所観音」に指定された33箇所の寺院の中で19箇所が廃絶しており、その後新たに追加された場所もあります。また、平成4年（1992年）には30番札所が入れ替わり、常に変化を続けています。

現在、20番札所である「光明山 和合院 天徳寺」は大規模な工事を行っているため、参拝や御朱印の取得ができなくなっています。この工事は2027年3月31日に完了予定です。

まとめ

江戸三十三観音札所は、歴史的な背景とともに今なお多くの人々に親しまれている観音巡礼の場です。かつての巡礼文化を引き継ぎつつ、現代の参拝者も受け入れるこの場所は、東京を訪れる際の貴重な信仰のスポットとなっています。仏教信仰が育んできた文化と、都市生活に根ざした新しい風俗が融合したこの霊場は、多様な歴史を体感できる地域であるといえるでしょう。

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