江戸前鮨職人きららの仕事

江戸前鮨職人きららの仕事

『江戸前鮨職人きららの仕事』は、早川光が原作を手がけ、橋本孤蔵が作画を担当した日本の漫画作品です。また、これを原作としたテレビドラマも制作されました。伝統的な「江戸前鮨」の世界を舞台に、若き女性職人の成長と、個性豊かな登場人物たちが繰り広げる人間ドラマ、そして手に汗握る「スシバトル」が描かれています。

作品の成り立ちと展開

本作は2002年に集英社の漫画雑誌『MANGAオールマン』で連載を開始しましたが、同誌の休刊に伴い、すぐに『スーパージャンプ』へ移籍して連載が続けられました。当初は、病に倒れた祖父に代わり、主人公である海棠きららが一人で下町の鮨屋「藤重」を切り盛りしようと奮闘する、人情味あふれる物語として始まりました。しかし、『スーパージャンプ』移籍後、革新的な実力を持つライバル、坂巻慶太が登場することで物語は大きく変化します。職人同士が技術や知識、そして魂をぶつけ合う「スシバトル」が物語の中心となり、よりエンターテインメント性の高い展開へと変貌を遂げました。

第一部は2007年に完結し、単行本は全16巻が刊行されています。その後、坂巻慶太を主人公としたスピンオフ作品『渡職人残侠伝 慶太の味』が同社の増刊誌などで連載されました。さらに、2008年からは第二部となる『江戸前鮨職人きららの仕事 ワールドバトル』が連載され、国際的な舞台でのスシバトルが展開されました。こちらは単行本全7巻で完結しています。

主な登場人物

海棠 きらら

幼くして母を亡くし、鮨職人の祖父・藤原重光に育てられました。祖父仕込みの伝統的な「本手返し」を使いこなすことができます。祖父が病に倒れたことで店を守る決意をしますが、自身の力不足を痛感。九州の名店での修行を経て、ライバル・坂巻慶太との出会い、そしてスシバトルへの参加へと物語は進みます。伝統技術を受け継ぐ「江戸前最後の遺伝子」と呼ばれ、スシバトル決勝では準優勝を飾りました。物語の進行と共に職人として、人間として大きく成長し、さらなる高みを目指して渡り職人として旅立つなど、その探求心は尽きません。

坂巻 慶太

銀座で長年修行を積み、渡り職人としての経験も持つ実力派です。その後、回転寿司チェーンを展開し、業界の風雲児として注目を集めます。ライバル店の買収を目論む中で海棠きららと出会い、彼女の隠された才能に驚かされます。チェーン事業から身を引き、再び一人の鮨職人として勝負の世界へ身を投じます。「辻斬り」と呼ばれる挑戦的なスタイルで既存の鮨職人たちに挑み、硬直した業界を揺るがす存在となります。自らが主催に関わったスシバトルでは優勝を果たし、「石塔返し（雷神返し）」といった秘伝の技術も習得。改革者として業界に影響を与えました。その人気の高さから、彼の渡り職人時代を描くスピンオフも生まれました。鋼のような肉体も特徴の一つです。

個性豊かな脇役たち

作品には、きららや慶太を取り巻く多様なキャラクターが登場します。絶対味覚を持つ若き天才・神原朱雀、辛口ながらも造詣の深いグルメ雑誌編集者・高野有樹、鮨の三大神に数えられる伝説の渡り職人・秤谷小平治といった、スシバトルでの重要な対戦相手や協力者たち。また、きららの祖父・藤原重光や、彼女を支える銀座の鮨店主・進藤森（シンちゃん）、伝統技術を伝える和久井五郎など、主人公の成長を後押しする存在も欠かせません。さらに、スシバトルを盛り上げる個性的な審査員たち（美食評論家、陶芸家、料理研究家、テレビ局の社主など）も物語に彩りを加えています。

テレビドラマ化

2005年には、本作を原作とする単発のテレビドラマがTBS系列の『水曜プレミア』枠で放送されました。主演は国仲涼子が務め、海棠きららを演じました。ライバル・坂巻慶太役は保坂尚輝、秤谷小平治役は田中邦衛が演じるなど、豪華キャストが集結しました。原作の唐津編をベースとしつつも、舞台は東京に集約されるなど、ドラマ独自の脚色も加えられ、原作の持つスシバトルの要素や人情ドラマが描かれました。

『江戸前鮨職人きららの仕事』は、単なる料理漫画に留まらず、伝統技術の継承、ライバルとの切磋琢磨、そして主人公の人間的な成長を深く描いた作品として、多くの読者に支持されました。スシバトルの緊迫感と、登場人物たちの熱いドラマが魅力です。

もう一度検索