江波駅 (福井県)

江波駅：昭和の面影を偲ぶ廃駅

福井県越前町に存在した江波駅は、福井鉄道鯖浦線の歴史を語る上で重要な役割を担った駅でした。本稿では、その歴史、構造、そして現在に残る痕跡について詳しく見ていきましょう。

開業から廃止まで

江波駅が開業したのは昭和3年（1928年）11月8日、佐々生駅と織田駅間の開業にともなうものでした。その後、昭和20年（1945年）8月1日には福武電気鉄道との合併を経て、福井鉄道鯖浦線の駅となりました。しかし、昭和47年（1972年）10月12日、西田中駅と織田駅間の路線廃止に伴い、江波駅もその歴史に幕を閉じました。わずか40年余りの短い期間でしたが、地域住民の生活に密着した、重要な交通拠点として機能していたことは間違いありません。

駅舎とプラットフォーム

江波駅は相対式ホーム2面2線を有する構造でした。駅舎は木造建築で、温かみのある佇まいだったと思われます。晩年には駅舎側のホームのみが使用されるようになり、利用者の減少が見て取れます。特筆すべきは、バス路線との相互乗り換えが可能なバス停が駅舎近くに設置されていた点です。鉄道とバスの連携により、周辺地域へのアクセスを確保する役割を担っていました。この形態は、当時の地方交通における典型的な事例として、研究の対象となる可能性も秘めています。

現在の駅跡

残念ながら、現在江波駅の名を留めるものは何も残っていません。しかし、かつての駅があった場所には、福鉄バスの停留所「陶芸村口」が設置されています。これは、江波駅の跡地がバス路線に転用されたことを示唆しています。駅舎の建材や看板などは、既に撤去されているものと思われます。それでも、この停留所の存在は、かつてこの地に江波駅が存在したことを静かに語りかけているかのようです。

江波駅周辺の地域と交通

江波駅は、周辺地域の産業や生活と深く結びついていました。駅周辺には、陶芸が盛んな地域が広がっており、観光客の利用もあったと推測されます。鉄道の廃止後、バス路線への移行は、地域住民の生活に大きな影響を与えたはずです。その影響を分析することで、地方交通における公共交通機関の役割、およびその維持・存続の難しさについて考察することができます。

参考文献

* 高原則夫・高原隆義『駅　福井の”おっ母ちゃん”と５人の子供たち』日刊ゲンダイ、2014年。ISBN 978-4-8226-0314-4。

江波駅は、その短い歴史の中に、昭和時代の地方交通の変遷を凝縮した存在と言えます。この廃駅を通して、地域の変遷や交通史を紐解くことで、現代社会における交通インフラのあり方について改めて考える機会となるでしょう。

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