江雪左文字

江雪左文字についての詳細

江雪左文字（こうせつさもんじ）は、日本の南北朝時代初期に作られた刀であり、現在は広島県福山市のふくやま美術館に所蔵されています。この刀は日本の国宝に指定されており、その正式名称は「太刀銘筑州住左（江雪左文字）」です。また、打刀拵が附として認定されています。

刀工左文字と作刀の歴史

江雪左文字は、筑前国の刀工である初代左文字（大左）によって製作されたとされています。この左文字という名称は、刀工の一派を指し、特に「左」という言葉は左衛門三郎を略したものとされています。江雪左文字の作風には、板目のつんだ鍛えや強い沸、深く明るい匂口が見られ、突き上げて返る帽子などが特徴的です。初代左文字自体は短刀の作成を得意としており、刀自体の作製は稀有な存在です。

名の由来と歴史的背景

刀の名前「江雪左文字」は、後北条家の家臣である板部岡江雪斎がこの刀を佩刀としていたことに由来しています。江雪斎は後北条家に仕官した後、豊臣秀吉や後の徳川家康に仕えました。江雪左文字は、江雪斎から家康へと献上されたと言われています。さらに、江雪斎が秀吉に対して見せた胆力により、彼は義理立てをし、後に刀を秀吉に献上することで更に名声を高めました。

江雪左文字がどのようにして徳川家に渡ったかにはさまざまな説が存在し、特に1589年には江雪斎が秀吉と面会し、重要な約束を交わしていることが記録されています。この約束は後北条家の降伏をきっかけに破られましたが、江雪斎の言葉と態度によって彼は助命され、その際に江雪左文字を献上したとされています。

徳川家への伝来と近代史

江雪左文字は後に徳川家康の息子である徳川頼宣に与えられ、大坂の陣に参戦することになります。以後、この刀は紀州徳川家に伝わり、1933年には国宝として指定されています。1934年には紀州徳川家から競売に出された刀は長尾欽彌によって落札されました。長尾美術館を経て、1951年には文化財保護法に基づき新国宝に指定されています。

さらに、2000年時点での所有者は中国パール販売であり、同社はその後商号変更を行いました。本刀は長年にわたり登録美術品制度に則り、ふくやま美術館に寄託されていましたが、2018年にはふくやま美術館に寄贈されるという重要な歴史を持っています。

作風と特徴

江雪左文字は、その刃長78.1センチ、反りは2.4センチという特徴を持ち、鎬造や丸棠を施された美しい造りです。地鉄は板目肌で、地沸がつき、切先は中切先のびる独特の形状を持っています。この刀の刃文は、歴史資料によれば「湾れに互の目まじる」と記述されています。さらに、その沸は強く、明るく冴える匂口が特に評価されています。

江雪左文字には、家康が製作させた黒漆研出鮫の打刀拵が附属しており、これもまた刀の美しさを際立てる要素となっています。江雪左文字はその優れた作風と歴史的価値から、今日でも多くの愛好家や研究者に注目されています。

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