池上雪枝

池上雪枝

池上雪枝（いけがみ ゆきえ、1826年3月9日 - 1891年5月2日）は、社会事業家として知られており、日本で初めて感化院を設立した人物です。彼女の取り組みは、社会的な問題を抱える若者たちを救済し、再教育を施すことに焦点を当てていました。雪枝の生涯は、教育と社会事業の重要性を後世に伝えるものでもあります。

経歴

雪枝は摂津国、現在の大阪府に生まれました。彼女の旧姓は大久保であり、家族は勤皇派の活動家でした。幼少期からその才能を発揮し、4歳で狂歌を詠むなど「天才少女」と称されました。彼女は、気象を予測する才能にも恵まれていました。これが彼女の後の社会事業における洞察力に繋がることとなります。

雪枝は、7歳のときに京都の近衛家に預けられ、20年間にわたり、多くの学問を学ぶ機会を得ます。この経験は、彼女の人格形成や社会思想に大きな影響を与えました。1852年に商家の息子と結婚し、5男2女をもうけますが、夫の事業の失敗により、生活のために易学を用いて生計を立てることになります。

感化事業の始まり

彼女は、明治維新後の社会の混乱や若者の非行に対する深い理解を持っていました。1883年、彼女の自宅に「池上感化院」を設立し、若者たちの救済と再教育に取り組み始めました。感化院の運営は厳しく、当初は思うように行かない時期もありましたが、次第に生徒を受け入れ、教育を施す場となりました。

雪枝は、生徒一人一人の性格を理解し、それぞれに適した技術や教育を提供しました。特に英語教育に力を入れ、国際感覚を育むことにも注力しました。また、洋傘や石鹸、ステッキなどの製作を通じて職業教育も行い、多くの生徒が社会に羽ばたく機会を得ることになります。

落ち込む感化事業

しかし、1886年には感化院も経営難に直面し、運営は困難を極めました。多くの問題を抱えながら、1888年には閉鎖寸前にまで至りました。事業計画の不備や予算不足、雪枝自身の健康問題が重なり、彼女の夢は叶うことはありませんでした。

1891年、雪枝は65歳でこの世を去ることになります。亡くなる直前に詠んだ辞世の句からは、彼女の思い残しが伝わってきます。彼女の墓碑は、大阪の栗東寺にあります。

没後の評価

彼女の死後、しばらくはその業績は忘れ去られた時期もありましたが、1939年には「感化事業の母」として再評価され、過去の功績が認められるようになりました。大阪府立修徳学院が研修を行う際にも、彼女の業績が取り上げられ、慰霊祭などが開催されています。

彼女が設立した感化院での授産事業は、後に多くの人に影響を与えました。特に、大久保真敏（彼女の孫）が設立した弥栄青少年修練場は、彼女の精神を受け継いで多くの人々の支えとなりました。

まとめ

池上雪枝は、不良少年の救護に生涯を捧げた先駆者であり、社会事業の重要性を広めるために尽力した人物です。その理念は現代にも通じるものがあり、教育や社会福祉の歴史を語る上で欠かせない存在です。彼女の影響力は、今なお多くの人々に受け継がれています。

もう一度検索