池田忠継

池田忠継：備前岡山藩初代藩主、若き日の生涯と毒饅頭伝説

池田忠継（いけだ ただつぐ）は、慶長4年（1599年）に生まれ、備前岡山藩の初代藩主となった人物です。彼は播磨姫路藩主・池田輝政の次男（実際は五男）として生まれ、母は徳川家康の次女である督姫という、徳川家との繋がりも深い人物でした。

若き藩主の誕生と短い生涯

忠継は、外祖父にあたる徳川家康の縁故により、慶長8年（1603年）にわずか5歳で備前岡山28万石に封じられました。これは、岡山藩を領していた小早川秀秋が無嗣断絶により改易された後の措置でした。しかし、幼少の忠継が自ら政務を執ることは難しく、異母兄である利隆が執政代行として岡山城に入り、忠継は父の姫路城に留まることとなりました。

慶長19年（1614年）、父・輝政の死後、16歳で初めてお国入りを果たします。父の遺領のうち、母・良正院の化粧料であった西播磨10万石を分与され、合計38万石を領しました。大坂冬の陣では兄・利隆と共に徳川方として参戦しますが、帰城後に病を発症し、翌慶長20年（1615年）に岡山城で死去。わずか17歳という若さでした。森忠政の娘との婚約も内定していましたが、婚姻前に亡くなったため、後継者はおらず、同母弟の忠雄が跡を継ぐこととなりました。忠継兄弟の系統は、忠雄の嫡男・光仲の時に因幡鳥取藩へ転封となり、幕末まで存続しました。

忠継の墓所（廟）は清泰院にあり、木像と位牌が安置されています。遺体は廟の下に木棺の中に胡座姿で埋葬されています。清泰院は当初、岡山県岡山市中区小橋にありましたが、1964年（昭和39年）に国道橋建設のため、岡山市南区浦安本町に移転。それに伴い、廟も1978年（昭和53年）に現在の場所に移されました。この廟は、岡山県指定重要文化財となっています。

毒饅頭伝説

忠継の早世には、毒殺を巡る以下のような伝説が残されています。

忠継の母・督姫が、実子である忠継を姫路城主に据えるため、継子で姫路城主であった利隆の暗殺を企てたというものです。岡山城内で利隆が忠継に対面した際、督姫は饅頭に毒を盛り、利隆に勧めようとしました。しかし、女中が手のひらに「どく」と書いて見せたため、利隆は毒入り饅頭に手をつけませんでした。これに気づいた忠継は、利隆の毒入り饅頭を奪い取って食べ、死亡したとされています。忠継は自らの命を犠牲にして、長兄で正嫡の利隆を守ったというのです。また、督姫もこれを恥じて毒入りの饅頭を食べて死亡したとも伝えられています。

しかし、史実としては、忠継は慶長20年（1615年）2月23日に岡山城内で病死しており、督姫も同年2月4日に二条城内で死去し、京都・知恩院に埋葬されています。1978年（昭和53年）に忠継廟の移転の際に行われた発掘調査でも、遺体の調査が行われましたが、毒殺の証拠は見つかりませんでした。

毒饅頭伝説はあくまで伝説であり、史実とは異なるものの、忠継の死を巡る様々な憶測を生み、後世に語り継がれることとなりました。

池田忠継は、若くして藩主となり、短い生涯を終えた人物ですが、その名は備前岡山の歴史に深く刻まれています。彼の遺徳を偲び、その生涯を振り返ることは、岡山藩の歴史を理解する上で重要な意味を持つと言えるでしょう。

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