池田長常

池田長常は、慶長14年（1609年）に備中松山藩初代藩主・池田長幸の長男として生まれました。幼い頃から武芸に秀で、勇猛な人物を好んだと伝えられています。また、藩主となる以前から江戸幕府3代将軍・徳川家光に兜を贈られるなど、特別な寵愛を受けていました。

寛永9年（1632年）に父・長幸が亡くなると、家督を継いで松山藩の第2代藩主となりました。この時、遺言により次弟の長純との分割相続が指示されましたが、叔父の長頼と長純の舅である脇坂安信が対立。その結果、長頼が安信の弟を殺害し、長頼は切腹、安信も改易されるという騒動が起こりました。しかし、長常にはお咎めはなく、家督を単独で相続しました。

寛永10年（1633年）には、松江藩主の堀尾忠晴が後継ぎのいないまま死去し、堀尾家が改易となった際、松江城の守備を担当しました。これは、長常が幕府から厚い信頼を得ていたことの証左と言えるでしょう。

しかし、長常には後継者問題が立ちはだかります。長男の万大夫が早世し、娘しかいなかったため、長常は死に際して娘を末期養子として家督を継がせようとしました。しかし、幕府の裁定が下る前に寛永18年（1641年）9月6日に33歳という若さで死去しました。結局、末期養子は認められず、備中松山における池田家は断絶することとなりました。

その後、長常の母とその兄弟の嘆願により、三弟の長信が1000石の旗本として井原に陣屋を構え、4つの村を治めることが許されました。これにより、池田家の家名だけは辛うじて存続することとなりました。

長常の父は池田長幸、母は森忠政の娘である松子です。正室は堀直寄の娘で、生母不明の子供に、男子の万大夫、次女は分部嘉治の正室、他に溝口政良と酒井忠洪に嫁いだ娘がいます。

池田長常は、武勇に優れ、幕府からも信頼された人物でしたが、若くして亡くなり、後継者問題により家が一時断絶するという悲劇に見舞われました。しかし、その家名は弟によって受け継がれ、辛うじて存続しました。この出来事は、当時の大名家の相続の難しさと、幕府の権威を示すものと言えるでしょう。

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