池鯉鮒宿

池鯉鮒宿について

池鯉鮒宿（ちりゅうしゅく）は、東海道五十三次における39番目の宿場として、愛知県知立市に位置しています。この宿場は、歴史的仮名遣いでは「ちりふ」と表記され、江戸の日本橋から約330キロメートル離れた場所にあり、江戸時代には約10日間の旅で到達可能でした。宿場は、鳴海宿に向かう途中に位置し、境橋を西へ渡ることで三河国から尾張国へと進み、その先には有松間宿があります。

池鯉鮒宿は、特に馬市が開かれていたことで知られ、歌川広重の「東海道五十三次」にもその様子が「首夏馬市」として描かれています。馬市は毎年陰暦の四月、具体的には4月25日から5月5日頃までの期間に開催されていました。この地域では、三河地方の特産品である木綿の市も開かれていました。

1604年（慶長6年）頃、徳川家康の命令により、10年ほど後にこの宿場が設けられました。当時の宿場は、並木八丁と呼ばれる松並木の道沿いに位置し、馬をつなぐために用いられました。しかし、この松並木は1959年（昭和34年）の伊勢湾台風によって多くの古松が倒れ、その後1970年（昭和45年）には新たに158本の幼松が植樹されました。明治時代には馬市が松並木から慈眼寺の山町桜馬場へ移り、その後牛市や鯖市が行われましたが、昭和の時代にはこれらの市場も終了しました。

近隣の観光名所と文化遺産

池鯉鮒宿近くには、多くの歴史的かつ文化的なスポットが存在しています。

• - 知立神社：三河国二ノ宮として知られ、旧称は池鯉鮒大明神です。地域の信仰の中心となっている神社です。
• - 知立松並木：旧東海道に沿って残る松並木で、歴史的価値が高い場所です。
• - 来迎寺一里塚：愛知県知立市に現存する一里塚で、文化財に指定されています。
• - 無量寿寺：臨済宗妙心寺派の寺院で、伊勢物語に登場するカキツバタで有名です。

地元の文化は多くの文人たちにも愛され、池鯉鮒宿に関連する俳句や万葉歌が残されています。松尾芭蕉は「不断たつ 池鯉鮒の宿の 木綿市」と詠み、小林一茶は「はつ雪や ちりふの市の銭叺」と、木綿市の賑わいを描写しました。また、702年に詠まれた長忌寸奥麻呂の歌も、この地との関連があると言われています。

交通の要所

池鯉鮒宿は古くから交通の要所であり、周辺地域への道が多く分岐しています。

• - 師崎街道：刈谷から知多半島に至る道で、其の後、亀崎や半田を経由します。
• - 西尾街道：幡豆方面の人々が東海道に合流するための道で、京都へ向かう人々が利用していました。
• - 駒場道：挙母方面へと続く道です。

隣接する宿場は、岡崎宿と鳴海宿があり、当時の交通の要所として栄えていました。池鯉鮒宿の歴史や文化は、今に受け継がれています。

もう一度検索