沖浦和光

沖浦 和光（おきうら かずてる）

沖浦和光は、1927年1月1日に生まれ、2015年7月8日に逝去した日本の著名な社会学者および民俗学者である。彼は桃山学院大学の名誉教授および同大学の学長を務め、その研究は主に芸術論や社会思想史、比較文化論に焦点を当てている。特に、被差別民や被差別部落に関する研究を通じて、マルクス主義的な民族論を展開し、日本における社会的な偏見や差別問題に鋭く切り込んだ。

来歴

沖浦は大阪府豊能郡箕面村半丁（現在の箕面市）に生まれ、小学校の頃に大阪市内の下町に引っ越した。その後、いくつかの小学校を転校したが、最終的に私立桃山中学校および旧制浪速高等学校文科甲類に進学し、1953年に東京大学の英文科でアメリカ文学を研究した。卒業後、大学院へ進む傍らで大田区立大森第八中学校で英語を教えた。東大時代、沖浦は日本共産党員として学生運動の中心人物として活躍し、特に安東仁兵衛と共に活動を行った。

1961年に桃山学院大学の専任講師に就任し、その後助教授、教授と昇進した。1973年にはイギリス留学を果たし、その際にインドやアフリカ、東南アジアへの視察を行い、非西洋の文化を直接体験することで思想の転機を迎えた。その後、彼の研究対象は被差別民や被差別部落にシフトし、数多くの著作を発表した。

研究と業績

沖浦は初期には西洋の歴史と文化に関する論文を多く書いたが、イギリス留学を経て、非西洋地域の研究を重視するようになった。特に、高橋貞樹の『特殊部落一千年史』との出会いが、彼の歴史観を根本的に変えるきっかけとなった。そして1982年と1986年に桃山学院大学の学長も務め、1997年にその職を退いた。

彼の著作には、『竹の民俗誌』（1991年）、『瀬戸内の被差別部落 その歴史・文化・民俗』（2003年）、『幻の漂泊民・サンカ』（2001年）などがあり、特に「漂泊の民」とされるサンカに関する研究は注目を集めた。また、彼は被差別民と漂泊民の歴史を追求し、アナール学派の方法論に近いアプローチで記述している。2012年には人権活動における貢献が評価され、松本治一郎賞を受賞した。

人物と影響

沖浦は教鞭をとった大田区立大森第八中学校で、なべおさみという学生の顧問を務めていた。また芸術や文化にも情熱を注ぎ、アニメーターの沖浦啓之は彼の甥である。彼の学問に対する姿勢は、政権への迎合に走ることなく、一貫して社会的な正義や人権問題に取り組むべきだと主張した。特に、「天皇朝鮮起源説」の提唱者としても知られ、天皇家に関する発言が物議を醸した。

沖浦和光は、88歳でその生涯を終えるまで、文学や人権の向上に寄与した多大な業績を残した。彼の功績は、今なお日本の社会学や民俗学、さらには人権活動において重要な役割を果たしています。

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