河上修

河上 修

日本のジャズシーンにおいて、唯一無二の存在感を放つベーシスト、河上 修（かわかみ おさむ）。秋田県に生まれ、その豊かな音楽性は多くのファンを魅了し続けています。特に、ウッドベースを用いた深い響きと、ステージ上で見せる躍動的なパフォーマンスは、彼の代名詞とも言えるでしょう。

キャリアの始まりと躍進

河上氏の音楽キャリアは、わずか16歳で上京した直後の1974年に、名匠・渡辺貞夫氏のカルテットに抜擢されたことから始まりました。これは、若手ながらその才能が早くから認められていた証と言えます。翌1975年には、ジャズの世界的祭典であるスイスのモントルー・ジャズフェスティバルに出演し、ライブ盤「スイス・エア」にもその名を刻むなど、国際的な舞台でも早くから活躍の機会を得ました。その後、1979年からは約5年間にわたり、ジャズピアニスト世良譲氏のトリオに参加し、その技術と表現力にさらなる磨きをかけました。

『ミスター・ダブルベース』と独自のスタイル

河上修という名を聞いて、多くの人が思い浮かべる異名が「ミスター・ダブルベース」です。この異名は、1984年に発表された自身のリーダーアルバムのタイトルに由来しており、彼の卓越したウッドベース演奏技術を象徴しています。さらに、彼はステージ上で楽器を演奏しながら歌い、時には踊るという独自のスタイルを確立した先駆者としても知られ、「元祖『歌って踊るベーシスト』」とも称されています。この革新的なアプローチは、ジャズ演奏における表現の可能性を大きく広げました。

リーダー作品とセッション活動

リーダーとして発表したアルバムには、『ジャンプフォージョイ』や『ディアオールドグッドウィン』、『ミスターダブルベース』などがあります。中でも『ミスターダブルベース』は、ウッドベース10数台による合奏という、当時としては極めて画期的な試みで大きな注目を集めました。これは、彼のベースという楽器に対する深い探求心と、既成概念にとらわれない創造性を示すものです。

また、自身のリーダー活動と並行して、多岐にわたるセッションワークを展開しています。ジャズ分野における参加レコーディング数は200を超え、その確かな演奏は多くの作品に彩りを添えています。さらに、ジャズにとどまらず、ポップスやニューミュージックといった幅広いジャンルの人気アーティストたちのアルバムにも多数参加しており、その柔軟性と適応力の高さを証明しています。

近年の活動と貢献

長年の演奏活動で培った経験と知識を活かし、近年では自身の音楽レーベルの代表プロデューサーとしても手腕を発揮しています。演奏家としてだけでなく、楽曲の作曲や編曲も数多く手掛けるなど、クリエイターとしての側面も持ち合わせています。2010年には、長きにわたる音楽キャリアの一つの節目として、六本木のスイートベイジルにて音楽活動40周年を記念するライブを開催しました。

河上修氏は、その確かな演奏技術、挑戦的な音楽性、そして個性豊かなステージパフォーマンスをもって、日本のジャズシーンにおいて不動の地位を築き上げました。ベテランとして後進の指導にあたることはもちろん、プロデューサーやクリエイターとしての活動を通して、今後も日本の音楽界に多大な貢献をしていくことでしょう。彼の音楽は、時代を超えて多くの人々に聴き継がれていくに違いありません。

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