河内十人斬り

河内十人斬り事件

概要

河内十人斬り事件は、1893年に大阪府南東部の金剛山麓で発生した凄惨な殺人事件で、合計10人の命が奪われました。金銭や交際に関するトラブルが引き金となり、当時大きな話題となりました。この事件は小説や芝居の題材にもなり、さらに浪曲師京山幸枝若によって河内音頭の演目としても広まりました。

事件の発端

事件の中心となったのは、村人で博打打ちの城戸熊太郎とその弟分の谷弥五郎です。熊太郎の内縁の妻であるおぬいが、村の名主である松永傳次郎の弟と密通していることが明らかになりました。これに激怒した熊太郎はおぬいに別れ話を持ちかけますが、おぬいの母親の圧力で、熊太郎は別れるために金を支払うことを強いられました。

しかし定職のない熊太郎にとって金を用意することは困難であり、松永傳次郎に過去に貸した金の返済を求めましたが、彼はこれを拒否し、逆に暴行を加えました。このことで熊太郎は復讐を決意し、弥五郎と共に計画を練り始めるのです。

復讐の準備

半殺しの状態で弥五郎の家に隠れていた熊太郎は、復讐に向けての準備を進めました。まず、自らの決意の証として墓を作り、その後、日本刀や仕込み杖、猟銃を揃えるために京都、奈良、大阪へと出かけました。こうして彼は復讐のチャンスを伺っていました。

犯行の日

1893年5月25日、雨が降る深夜の中、熊太郎と弥五郎は武器を持って松永一家の元へと向かいます。熊太郎は、おぬいとおとら、松永傳次郎、彼の妻、息子らを襲撃しました。事件により、熊太郎は伝次郎の家を含む11人を殺害しました。しかし、伝次郎の愛人である松永寅次郎は不在のため、熊太郎たちの真の目的は果たせませんでした。

犯行後、熊太郎たちは家に火を放ち、金剛山へ逃げ込みました。

事件の発覚と結果

翌日の26日、近隣の富田林警察署に通報があり、事件が明らかになりました。大阪府警本部から緊急捜査が開始され、金剛山周辺に非常線を張りましたが、逃げた二人は捕まらず、地域住民が彼らを隠し援助していたことが判明します。

捜査本部は山狩りを行いましたが、二人の行方は捕まわらないままでした。しかし、事件から約2週間後、金剛山内で二人の自殺体が発見され、この事件はようやく終結を迎えます。

事件の影響

この度の事件は大阪の田舎で発生したにもかかわらず、関心を集め、多くの新聞で取り上げられました。事件が起こった同年には、小説や芝居としても上演され、富田林署の署長に仕えていた人力車夫の初代岩井梅吉が河内音頭の歌詞を創作しました。この曲は瞬く間にヒットし、「河内十人斬り」の名は広まり続けます。

当時の音頭は古典的な題材が多かった中、実際に起きた事件を歌った河内十人斬りは新鮮で、多くの人々の興味を引きました。歌うことで民衆は事件の詳細を知ることができ、後の浪曲や文学作品にも影響を与えることになりました。このように、河内十人斬り事件は大阪の文化や風俗にも深い足跡を残しました。

もう一度検索