河竹登志夫

河竹 登志夫 (かわたけ としお)

河竹登志夫は、1924年12月7日に東京で生まれ、2013年5月6日に亡くなった日本の著名な演劇学者です。彼は東京大学から文学博士の学位を取得しており、学位論文は特に「近代日本演劇とハムレット」というテーマに焦点を当てたもので、演劇学の分野における重要な研究となりました。早稲田大学の名誉教授であり、同大学院を経て、他の国際的な学術機関でも教鞭をとりました。

生い立ちと教育

本名は俊雄であり、演劇研究家である河竹繁俊の二男として育ちました。彼は、歌舞伎作者の河竹黙阿弥の曾孫という家系に生まれ、演劇に対する強い関心を持つようになりました。彼は旧制成城高等学校を経て東京帝国大学に進学し、理学部物理学科を卒業後、早稲田大学の第一文学部に転学して演劇を専攻しました。その後、ハーバード・エンチン研究所に客員研究員として招かれました。

業績と影響

河竹は「歌舞伎の「場」理論」における物理学の概念を応用した研究で知られ、さらに歌舞伎を反古典主義的・バロック主義的な到達点として捉える「歌舞伎バロック論」を提唱しました。彼は「比較演劇学」の先駆者としても高く評価されており、歌舞伎の国際的な公演にも積極的に関与しました。1960年のアメリカ公演を皮切りに、彼は12回にわたり松竹の文芸顧問として海外公演に同行しました。

1961年にはロシアでも歌舞伎公演を実現させ、俳優28人、演奏家22人、補助スタッフ22人を率いて、モスクワとレニングラードでの公演を成功裏に終えました。このような国際的な活動を通じて、彼は日本の伝統芸能を広める役割を果たしました。

受賞歴と栄誉

河竹は多くの賞を受賞しており、その中には1987年の紫綬褒章や1995年の勲三等旭日中綬章、さらには2000年の日本芸術院賞と恩賜賞などがあります。2013年には正四位の叙勲を受け、同年5月には日本経済新聞で『私の履歴書』を連載しました。また、彼は生涯を通じて歌舞伎の魅力を世に伝えるために、多くの著作を執筆しました。

趣味とエピソード

研究に取り組む際は、包丁を研いで精神を集中させるという特異な習慣があったと語られています。また、福光屋の日本酒「加賀鳶」の題字を手がけるなど、その芸術的センスを様々な場面で発揮しました。彼は蛙を収集することを趣味としており、精力的な学術活動と多才な側面を持つ人物でした。

最期と遺言

2013年5月6日、東京都内の病院にて心不全により88歳で他界しました。彼の死に際して叙正四位、旭日重光章が贈られ、墓所は中野区源通寺にあります。河竹は、生涯を通じて演劇と文化の発展に寄与し、その存在は今もなお多くの人々に影響を与えています。

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