泉幸甫

泉幸甫（いずみ こうすけ）は、1947年9月4日に熊本県八代市で生まれた日本の建築家であり、工学博士です。

略歴

泉氏は1971年に日本大学生産工学部建築工学科を卒業後、1973年には同大学大学院修士課程を修了しました。大学院修了後は、日本大学の助手として教鞭を執るとともに、実務経験を積むため建築設計事務所アトリエRに勤務しました。

1977年、泉氏は自身の建築哲学に基づいた活動を展開するため、泉幸甫建築研究所を設立し、独立した建築家としての歩みを始めました。独立後、彼は主に住宅や集合住宅の設計において、数々の評価される作品を生み出してきました。

建築の実務に加え、建築教育にも深く関わりました。1994年から2007年まで日本大学で、また2004年から2006年までは東京都立大学で非常勤講師を務め、後進の指導にあたりました。教育者としての活動と並行して研究を続け、2007年には千葉大学大学院で博士課程を修了し、博士（工学）の学位を取得しました。その学識と豊富な実務経験が高く評価され、2008年には日本大学生産工学部建築工学科の教授に就任しました。同年には客員教授も務めています。

建築界におけるリーダーシップも発揮し、1989年から1997年にかけては「家づくりの会」の代表として、より良い住まいづくりの推進に貢献しました。

建築思想と活動

泉氏の設計は、住まい手にとっての快適性、その土地固有の風土との調和、そして建築材料が持つ本来の質感を重視する姿勢が特徴です。特に住宅設計においては、人間の生活空間の質を高めることを深く追求しており、「家づくりの会」や後述する「家づくり学校」での活動からも、その教育的・啓蒙的な側面がうかがえます。また、日本仕上学会での受賞からも、材料や仕上に対する並々ならぬこだわりが窺えます。

受賞歴

泉氏の建築作品は数々の賞を受賞しており、その設計手腕は広く認められています。主要な受賞歴は以下の通りです。

1987年：「平塚の家」で神奈川県建築コンクール優秀賞を受賞。
1999年：「Apartment 傳（でん）」が東京建築賞最優秀賞を受賞しました。
2000年：日本仕上学会より、学会作品賞および材料設計の追求に対する10周年記念賞を受賞。
2004年：「Apartment 鶉（じゅん）」が日本建築学会賞作品選奨に選ばれました。
2009年：「草加せんべいの庭」が草加まちなみ景観賞を受賞。
2014年：彼が校長を務める「家づくり学校」が、建築教育における顕著な功績により日本建築学会教育賞を受賞しました。

代表作品

泉氏が設計を手がけた代表的な建築作品の一部を以下に示します。住宅や集合住宅を中心に、多様な用途の建築が含まれています。

泰山館（1990年）
泥大津の家（1996年）
Apartment傳（でん）（1998年）
SUGAR（2001年）
梟（2001年）
Apartment鶉（じゅん）（2002年）
南原山荘（2003年）
しだりおの家（2003年）
庸（2005年）
Apartmentなかなか（2006年）
角屋（2008年）
而邸（2008年）
Apartment惣
「螢遊苑」長府製作所記念館
工／手の家（2016年）
八雲（2017年）
Apartmenntふじ（2020年）

著書

泉氏は自身の建築に関する知見や設計思想を著書を通じて広く発信しています。主な著書は以下の通りです。

『住宅設計の考え方』（彰国社）
『建築家の心象風景1』（風土舎）
『建築家が作る理想のマンション』（講談社）
『住宅作家になるためのノート』（共著　彰国社）
『日本の住宅をデザインする方法』（共著x-knowledge、2011年）

これらの著作は、専門家や建築学生のみならず、一般の人々にも建築や住まいづくりへの理解を深める機会を提供しています。

泉幸甫氏は、建築設計、教育、研究、そして建築関連団体の活動という多方面から、日本の建築界、特に住宅建築の分野において重要な貢献を続けている人物です。

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