法医 歯科学の女

法医 歯科学の女

『法医 歯科学の女』（ほうい しかがくのおんな）は、1997年から1999年までテレビ朝日系列の二時間ドラマ枠「土曜ワイド劇場」にて、全3回にわたり放送されたミステリードラマシリーズです。制作は大映テレビとテレビ朝日が担当しました。

このシリーズは、通常の刑事捜査に加えて、法医歯科学という専門分野の知見を活用して事件を解決する点に特色があります。身元不明の遺体や、事件現場に残された微細な証拠から、歯の治療痕、歯並び、顎の形状などを詳細に鑑定することで、被害者の身元を特定したり、事件の手がかりを見つけ出したりするプロセスが描かれます。

物語の中心となる主人公は、法医歯科学教室の助手です。第1作と第2作では、一ノ瀬美里（演：中村あずさ）が登場します。彼女は普段、横浜市内の船木歯科で歯科医師として勤務しており、同時に東都歯科大学で法医歯科学の助手も務めるという、まさに二足のわらじを履いています。性格は真面目ながらも、時にそそっかしい一面を見せる人間味あふれる人物として描かれています。

美里が法医歯科医を目指すようになった背景には、辛い過去があります。高校生の頃、両親が交通事故に遭い、乗っていた観光バスが転落・炎上。その結果、焼損した遺体の身元確認が困難となる中、歯科医による歯の鑑定によって両親の身元が確認された経験が、彼女にこの道を志す強い動機を与えました。

第3作からは、主人公が藤井めぐみ（演：有森也実）に交代し、同様に法医歯科学助手の立場で事件に関わります。

主人公たちが所属する東都歯科大学法医歯科学教室を率いるのは、法医歯科学の権威である村松平治教授（演：小泉博）です。多忙を極める村松教授は、遺体の身元確認などの実務を助手である美里やめぐみに任せることが多いという設定です。

事件捜査においては、各話ごとに異なる地域の警察関係者が登場します。第1作では木戸勇太係長（演：鶴見辰吾）や五十嵐良吉刑事（演：下川辰平）、第2作では桧山実刑事（演：船越英一郎）、第3作では海上保安庁の日野浩一（演：永島敏行）などが、それぞれの事件で主人公たちと連携を取りながら捜査を進めます。

本シリーズのもう一つの大きな特徴は、その舞台設定にあります。各話が南国の離島屋久島から指宿（第1作）、流氷漂う北の海網走オホーツク海（第2作）、そして青いサンゴ礁が広がる南の島（第3作、奄美大島などが舞台として推測される）と、日本各地の美しい風景を背景に物語が展開される地方色豊かなミステリーであることです。

登場する事件も、バラバラ死体や白骨死体といった、歯学鑑定が重要となる猟奇的な様相を呈しています。これらの遺体の口内情報から、わずかな手がかりを見つけ出し、それが事件解決の糸口となっていく過程が見どころとなっています。

脚本は田中ひろみ氏が全作品を担当し、監督は岡本弘氏が手掛けました。また、法医歯科学という専門性の高い内容を扱うため、山本勝一氏や船木穀氏らが医学監修として制作をサポートしています。その他、美術、撮影、照明、編集など、多くのスタッフが各話のクオリティを支えました。

『法医 歯科学の女』シリーズは、全3回という比較的短い放送回数ながら、当時あまり知られていなかった法医歯科学に焦点を当てることで、科学捜査の新たな側面を描き出した作品と言えるでしょう。個性的な主人公と地方色豊かな舞台設定、そして専門知識を駆使した捜査プロセスが組み合わさった、土曜ワイド劇場らしいミステリーシリーズでした。

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