泣かないで (映画)

ブロードウェイ女優の複雑な人生と、笑いあり涙ありの物語『泣かないで』

1981年公開のアメリカ映画『泣かないで』(原題: Only When I Laugh)は、ニール・サイモンの戯曲『ジンジャーブレッド・レディ』を映画化したコメディ作品です。監督はグレン・ジョーダンが務め、ニール・サイモンの妻であるマーシャ・メイソンが主演を務めています。

本作は、38歳独身のブロードウェイ女優ジョージアの人生を描いた物語です。華やかな舞台裏とは対照的に、ジョージアの私生活は複雑で、娘との関係、友人との葛藤、過去の恋愛など、様々な問題を抱えています。彼女は一見成功者のように見えますが、心の内には孤独や不安を抱え込んでいます。

ジョージアを取り巻く人々も個性的です。17歳の娘ポリーは思春期特有の反抗期で、母親との関係に悩んでいます。ジョージアの親友であるジミーは、売れない俳優でゲイという立場から、独自の視点でジョージアを支えます。もう一人の親友トビーは、40歳目前の既婚女性で、ジョージアとは対照的な人生を送っています。さらに、ジョージアの元恋人である劇作家デイビッドや、ジョージアとポリーにちょっかいを出す大学生ドンなど、物語に彩りを添える様々な登場人物が登場します。

映画全体を通して、ユーモアと感動が絶妙に交錯しています。ジョージアと娘ポリーとの関係は、時に衝突しながらも、深い愛情で結ばれています。友人たちとの交流は、ジョージアの心の支えとなり、彼女の人生に温かい光を差し込みます。そして、過去の恋愛の影は、ジョージアの心の傷を浮き彫りにし、彼女の人間的な深みを示しています。

本作の大きな魅力の一つは、マーシャ・メイソンを始めとする豪華なキャスト陣の演技です。マーシャ・メイソンは、ジョージアの複雑な感情を繊細に演じきっており、観客の共感を呼びます。彼女を支える脇役たちも、それぞれに個性的なキャラクターを演じ、物語に深みを与えています。特に、ジェームズ・ココ演じるジミーは、ジョージアにとってなくてはならない存在として、物語に重要な役割を果たしています。

『泣かないで』は、単なるコメディ映画にとどまらず、人生の喜怒哀楽を描き出した人間ドラマでもあります。笑いと涙が入り交じる展開は、観客の心に深く響き、忘れられない感動を与えてくれるでしょう。

主なキャスト

マーシャ・メイソン（ジョージア）：ブロードウェイの人気女優
クリスティ・マクニコル（ポリー）：ジョージアの娘
ジェームズ・ココ（ジミー）：ジョージアの親友で売れない俳優
ジョーン・ハケット（トビー）：ジョージアの親友で女優
デヴィッド・デュークス（デイビッド）：ジョージアの元恋人
ケヴィン・ベーコン（ドン）：大学生

アカデミー賞ノミネート

本作は、第54回アカデミー賞において、主演女優賞（マーシャ・メイソン）、助演男優賞（ジェームズ・ココ）、助演女優賞（ジョーン・ハケット）の3部門にノミネートされました。また、ジェームズ・ココは、同じ年に開催された第2回ゴールデンラズベリー賞（ラジー賞）の最低助演男優賞にもノミネートされ、史上初の快挙を成し遂げました。いずれの賞も受賞には至りませんでしたが、作品の高評価と、同時に低評価を受けるという珍しい事例となりました。

Rotten Tomatoesでの評価は、7件のレビューのうち4件が高評価（57%）で、平均点は10点満点中4.9点と、比較的高い評価を得ています。

『泣かないで』は、笑いと涙、そして人生の機微を描いた、忘れられない名作です。

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