泥の河

泥の河

『泥の河』は、作家・宮本輝による小説で、1977年に発表された後、1978年には筑摩書房から刊行されました。この作品は、作者のデビュー作であり、彼はこの作品で第13回太宰治賞を受賞しました。また、1981年には映画化されています。

あらすじ

物語は昭和31年の大阪を舞台にしています。信雄という少年は、安治川の河口近くに住み、父・晋平、母・貞子と暮らしています。彼の家の近くには舟に住む兄妹、喜一と銀子がいます。彼らの母親は生活のため舟で客をとるという噂が立っていますが、信雄にはその実情が理解できません。

ある日、信雄は友人の喜一と銀子に出会いますが、彼らは学校には行っていない子供たちです。信雄の家族は食堂を営んでおり、喜一と銀子が遊びに来る際、大人たちの間で「郭舟」という言葉が戦慄のように飛び交います。信雄は漠然とした不安を抱きつつも、彼らの家族の事情にはあまり関心を持たないのです。

物語が進むにつれ、信雄は父・晋平の過去に触れることになります。晋平は、戦地から帰った後に前の妻を捨てたという秘密を抱えています。信雄は父と共に京都へ行き、過去の因縁を目の当たりにします。それにより、晋平と貞子は共に罪の意識を持っていることが明らかになります。

戦慄の日々

やがて、信雄は舟に向かい、そこで喜一や銀子の母親・笙子と出会います。しかし、彼女は自分の母とは異なり、何か艶やかで不安を掻き立てる存在です。信雄の心には何とも言えない気まずさが残ります。

ある祭りの日、信雄と喜一は少しの小銭を持って出かけますが、大きな失望を味わうことになります。また、その夜には喜一が標識のように蟹を油に浸して燃やす残酷な遊びを始め、信雄は嫌悪感を抱きながらもその場を逃げ出します。

家族の遺産

舟は岸から動き出し、信雄は喜一の名前を叫びながら後を追うものの、その姿を見失います。両親との絆、社会の現実、そして家庭環境の影響が描かれており、信雄は自らの存在意義を問い直すことになります。

映画化

1981年に小栗康平の監督により映画化もされています。制作にあたっては多くの困難がありましたが、映画が完成した際には高い評価を得ることとなります。映画は白黒で、初めは配給を受けることが難しかったものの、最終的には東映にて全国公開され、多くの賞を受賞しました。

作品の評価

『泥の河』は、社会の暗部と人々の関係を根底に据えた文学的作品として評価されています。映画でも原作のテーマは反映され、特に子役たちの演技が高く評価されました。この作品は今なお多くの人々に感動を与え続けています。

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