注進

注進（ちゅうしん）とは

注進とは、事件や出来事などを詳細に書き記し、上位の者へ報告することを意味する言葉です。また、その報告内容が記載された書状そのものも「注進状」と呼ばれます。現代においては、緊急の事態や重要な情報を目上の人に速やかに報告する行為を指す場合もあります。

歴史

戦国時代

戦国時代においては、注進状は主に敵軍の動向や合戦の結果などを報告するために用いられました。これらの情報は、今後の戦略や出陣の判断に大きく影響を与えるため、非常に重要なものとされていました。

注進状が届けられた際には、迅速な対応を示すために返書が送られることが一般的でした。例えば、遠方の城にいる家臣からの注進に対し、主君が援軍を約束する旨を伝えるといった具合です。返書には、注進状の日付や到着日時などが詳細に記載され、情報の伝達経路や速度を明確にしていました。

江戸時代

江戸時代に入ると、注進は軍事的な報告に限定されず、事務的な事柄を伝える報告書としても用いられるようになりました。現代で言うところの決算報告書に相当するような書類も「注進状」と呼ばれました。

例えば、長州藩が藩内の状況を把握するために提出させた統計資料や収支明細の報告書である「防長風土注進案」などがその一例です。また、時代劇を扱った歌舞伎においては、合戦の戦況を報告する役柄が「御注進」と呼ばれることもありました。

近代以降

現代においては、「注進」という言葉が使われる頻度は減少し、主に前近代の報告書などを指す場合に用いられます。ただし、現代において「注進」という言葉を用いる場合、「告げ口」というニュアンスが含まれることがあり、報告や発言に対する否定的な意味合いで用いられることもあります。

まとめ

注進は、時代によって意味合いが変化してきた言葉です。戦国時代には軍事的な重要情報伝達手段であり、江戸時代には行政報告としての役割も担いました。現代では古めかしい言葉として使われることが減りましたが、その背景には、情報伝達のあり方の変化が見て取れます。

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