活魚車

活魚車について

活魚車（かつぎょしゃ）は、日本の鉄道で運行されていた特別な貨物車両で、生きた魚を輸送するために設計されました。この車両は、魚類の生存率を維持する工夫が施されており、主に1930年代に使用されていました。一般的に活魚車は日本国有鉄道（国鉄）で「ナ」の形式記号が与えられていました。この「ナ」は、「さかな」を意味するという説と、魚の生鮮食品を指す「生魚」の「ナ」から来ているという説があります。

背景

1926年頃、養殖業が進展する中で、特に琵琶湖の特産品であるアユの稚魚を全国の河川に放流する試みが始まりました。これは、琵琶湖の水質が栄養が不足しており、そこで養殖した稚魚が成長するのが難しいための対策でした。琵琶湖産の稚魚が栄養のある水域で成長することが確認され、本格的な放流が実施されました。初期の輸送は、一般の有蓋車に水槽を載せて行われましたが、輸送効率や魚の健康に関する問題が顕著でした。

専用車両の開発

この状況を受け、1931年にはナ1形活魚車が開発され、魚を冬眠状態で輸送できる設計が採用されました。この新しい貨車は、魚類の生存率を大幅に向上させることに成功し、翌年には改良型のナ10形が10両製造されました。活魚車は、アユ、フナ、コイなどの稚魚の輸送に特化して運用され、さらに特例としてフグの輸送にも成功しました。1940年代初めには、106尾中93尾のフグを生かしたまま兵庫までの長旅を果たしています。

構造

活魚車は、生きた魚を安全かつ快適に輸送するため、独自の循環系を持つ点が大きな特長です。ナ1形とナ10形は似た構造を持っていますが、後者では多くの改良が施されています。たとえば、車内に設置された4つの大型水槽には冷水とともに輸送される魚が格納され、天井には水を噴霧する貯水槽が配置されています。この特設の水槽によって、活魚車は魚に必要な酸素を供給し続けることが可能でした。また水の温度を保つための氷を入れられる貯氷箱があり、酸素供給のための酸素ボンベも搭載されていました。付添人は魚の様子を見守り、水流や酸素の管理を行う必要がありました。

輸送用の課題

1950年には、博多駅から鳥羽駅まで真珠母貝を活魚車で輸送しましたが、50時間におよぶ輸送中に全滅するという悲劇が起こりました。この失敗は、国鉄に少なからぬ影響を与え、以降の運用に改善の必要性を示す出来事となりました。

製造と運用

ナ1形の初回製造は1931年で、改造から始まりました。その後、ナ10形が続々と製造され、1935年には合計で10両が運用されました。しかし第二次世界大戦により輸送が一時中断された後、再開時には通常の有蓋車への依存が続きました。1987年には、より先進的な活魚輸送用のU8Dコンテナが新たに開発されています。

現在でも生きた魚を輸送するために特別な車両が使われており、トラックの荷台に大型水槽を設置した活魚専用車両が存在します。これにより、魚の輸送は高度な技術によって現代に引き継がれています。

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