浦尻貝塚

浦尻貝塚：縄文時代から中世へ、時を超えた人々の営み

福島県南相馬市小高区に位置する浦尻貝塚は、縄文時代前期から晩期、古墳時代後期、平安時代、中世と、各時代の集落跡や遺構が重なり合う複合遺跡です。とりわけ縄文時代の遺構は、5700年前から3000年前という長期間にわたる集落の痕跡であり、その規模は7ヘクタールにも及びます。この貴重な歴史的価値が認められ、2006年12月6日に国の史跡として指定されました。

貝塚の構造と発見

浦尻貝塚では、4ヶ所の貝層が確認されています。これらの貝層は、東西15-20メートル、南北30-40メートルと広範囲にわたり、最大で1.8メートルを超える厚さを持つものもあります。貝塚が形成された舌状の段丘上には、竪穴建物や柱穴群、貯蔵穴、土坑墓などが点在しており、当時の人々の生活空間が広がっていた様子をうかがい知ることができます。中央部では、直径約60メートルにわたって掘削された平坦な場所が確認されており、集落の中心的な空間であったと考えられます。段丘の南側にある貝層は、縄文時代晩期前半のものとされています。

貝層から読み解く当時の食生活と環境

貝層からは、アサリを主体に、スズキ、ウナギ、ハゼ、イワシなどの魚類、シカやイノシシなどの動物、カモなどの鳥類といった多種多様な生物の痕跡が見つかっています。縄文時代晩期には、ヤマトシジミやフナといった汽水・淡水域の生物が増加する一方で、大型のサメ類やマダイなどの外洋性の魚類も確認されており、当時の漁業の活発化と食生活の変化が示唆されています。また、骨角製の漁労具が多数出土していることからも、外洋域の利用が盛んであったことがわかります。

複合遺跡としての価値

浦尻貝塚は、長期間にわたって形成された集落・貝塚であるため、各年代ごとの貝塚が存在し、縄文時代の食料獲得方法や、当時の環境の変化を知る上で非常に重要な資料となります。まさに「大規模貝塚がある中心的なムラ」と評されるように、貝塚と集落が一体となって存在することで、当時の人々の生活様式や社会構造の変遷をより深く理解する手がかりを与えてくれます。各貝層から出土する動物の遺体は、当時の生業と環境の関係を調査するための貴重な手がかりとなるでしょう。

浦尻貝塚は、縄文時代の人々の暮らしぶりや自然環境との関わりを今に伝える、貴重な歴史遺産です。

もう一度検索